世界中の市場を中国製品が埋め尽くす

実際にこの巨大なアジアの国が目指しているのは、“新グローバリゼーション”の世界をつくり、そのリーダーになるだけではなく、その支配者になることだ。

工業製品から最先端テクノロジーまでのあらゆる分野で、世界中の市場を中国製品で埋めつくすことも可能だろう。しかも、社会経済的レベルがより高い他国が太刀打ちできないほど安い価格の製品で。

ペドロ・バーニョス『国際社会を支配する 地政学の思考法』(講談社)
ペドロ・バーニョス『国際社会を支配する 地政学の思考法』(講談社)

この一人勝ち競争によって多大な利益を得るであろう中国は、それを、従来の軍事からサイバースペース、さらには宇宙にいたるまでの新しい分野の開発につぎ込むことができる。これまで全世界の指揮をとってきた国々にとっては大いに気がかりだろう。

こんな野心的な経済発展を促進させるため、中国は世界のGDPの約60%を占め、地球の総人口の75%にあたる領域と経済を通じてつながれるよう、リアルとバーチャルの両方で世界規模のネットワークをつくる具体的な計画を進めている。中国とヨーロッパを道路や鉄道でつなぐ新しい「シルクロード経済ベルト」や、中国を東南アジア、インド、中東、アフリカと結ぶ「21世紀海上シルクロード」などがその例である。

始まった米中の命がけの戦い

公には共産主義を掲げている国が大きな資本主義国家へと変貌し、資本主義の旗振り役となる過程を見ていると矛盾を感じずにはいられないが、これこそ、経済が国政や地政学におよぼす影響がよく表れている例だろう。

今後は、自分たちがつくり上げたグローバル化を中国に“横取り”された米国の反応を見ていく必要がある。中国政府が“新グローバリゼーション”で世界を支配しようとしているときに、ワシントンが手をこまねいているとは考えられない。

経済面での対立は間違いなく始まっており、それは、やがて命がけの戦いとなるだろう。従来の戦争にならないことを祈るばかりだが、その危険性もないとはいえない。別の国々の間で戦争が勃発したり、第三国で戦争が繰り広げられたりすることも考えられる(北朝鮮が戦場となり、そこで間接的に米国と中国が戦うことになるかもしれない)。

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