南シナ海での実効支配の拡大、台湾への圧力、国連の制裁対象となっている国家のサポートなど、外交において「国際協調的」とはいいがたい行動が目立つ中国。だが、軍事戦略家のペドロ・バーニョス氏は、「国家が強大であればあるほど、他国の要求については配慮しなくなるのが地政学の常識」と指摘する——。

※本稿は、ペドロ・バーニョス『国際社会を支配する 地政学の思考法』(講談社)の一部を再編集したものです。

「強者は望むことを行い、弱者は強者の横暴に苦しむ」(古代アテネの歴史家トゥーキュディデース)――2019年6月28日、G20大阪サミットに集った各国首脳。
写真=AAP Image/アフロ
「強者は望むことを行い、弱者は強者の横暴に苦しむ」(古代アテネの歴史家トゥーキュディデース)――2019年6月28日、G20大阪サミットに集った各国首脳。

リーダー、取り巻き、一匹狼

世界中のどんな学校にも、小さな集団を仕切る生徒が存在する。その子は、クラスの、あるいは学年全体の支配者としてよく知られ、学校中の生徒から敬われ、恐れられている。

特別な影響力を持つ子どもは、その集団にできるだけ高潔な振る舞いをするよう促し、思いやりのある行動をとるように導くこともできるはずだ。だが往々にしてリーダーとなる子どもは、乱暴な行動を扇動しがちで、教師の知らないところで校則を破るようほかの子に強要することも多い。ひどい場合は、身体的に弱かったり、能力や魅力に欠けると判断されたりした子どもを、精神的に、ときには身体的に攻撃することもある。

通常、そういうリーダーの周りには取り巻きがいる。リーダーの近くにいることで、自分は守られたい、認められたいと考える子どもたちだ。彼らは、自分に欠けている能力や強さを求めてリーダーに近寄っていく。たとえ自我の一部を失ったとしても、自分になんらかの地位が与えられて特別扱いしてもらえるおべっか使いの随行団の一員になるほうを選ぶのである。

一方、リーダーの影響力やグループ全体のプレッシャーに抵抗しながら、まずまずの学校生活を送る子どもたちもいる。ある程度の力を持っていても、派閥はつくりたくないとか、影響力ある立場にはなりたくないと思うタイプの子たちだ。彼らは自分を大切にし、自分らしく生活できれば満足であり、仲間に対する不適切な行動にはかかわりたくないと考える。状況によってはそのとき力を持っている者と一時的に手を組むこともあるが、基本的にはどこにも属さずマイペースでいたいと願う。