世界はどこに向かうのか。米国と中国の2大国は破滅的な衝突を回避できるのか。気候変動、人口問題、海洋汚染、核拡散などの地球規模の危機に世界はどう立ち向かえばいいのか。「ヨーロッパ最高の知性」と称されるジャック・アタリ氏が、産官学の各界が連携する「日本アカデメイア」主催のシンポジウム「東京会議」出席のために来日した。「知の巨人」が語った地球の未来に向けての処方箋とは――。(第1回/全5回)
中国は5000年の歴史の中で常に「内憂」を抱えていた
――12月12日、東京・六本木のグランドハイアット東京で開かれた「東京会議」。冒頭、アタリ氏は、混沌とした世界の未来を予見するためには、まず過去を知ることが必要だと力説した。
我々が今後どこに行くのかを知るためには、これまでどこにいたのかを知ることが大事です。今、世界は混沌としています。地政学、環境、人口動態、イデオロギーといったさまざまな危険な問題がありますが、これらは突然現れたわけではなく、カオスには原因があり、過去がある。カオスは、立場によって見え方が違います。ですから、問題を見るときには我々がどういう立ち位置にあるかを知る必要がある。
ヨーロッパにとって関心の深いことが必ずしも日本にとってはそうでないということもあります。その一方で、グローバルな問題もあります。現時点の状況を長期的なトレンドで考えるために経済的・地政学的な歴史を振り返ってみたいと思います。
これまで世界は、常にリーダーが支配していました。中国は5000年の歴史を持ちますが、統一された中国帝国であったというわけではありません。戦いや内戦を経てさまざまな困難や脆弱性を抱えてきました。これまでの中国は、西の文明が考えるようなものではありませんでした。中国は常に内向きであり、さまざまな理由から文化的イデオロギーがありました。