※本稿は、ペドロ・バーニョス『国際社会を支配する 地政学の思考法』(講談社)の一部を再編集したものです。
ドルに致命傷を負わせる覚悟の中国
世界最大級の石油輸入国である中国は、原油の国際取引を人民元建てで行う計画を立てている。人民元は、上海と香港の取引所で問題なく金(きん)と交換可能になるという。それが実現すれば、人民元がアジアにおける石油市場の通貨となり、石油輸出国はこれまでのようにドルを使用しなくてもかまわない。
北京が何年も前から画策してきたこの斬新な計画は、2017年末に実現する予定〔訳注:2018年3月に人民元建ての取引が開始している〕で、そうなると、ロシア、イラン、ベネズエラといった主要な石油輸出国のいくつかは、米国の制裁をかわすことができるだろう。
この動きは、近年、人民元が特別引出権(SDR)〔訳注:国際通貨基金(IMF)が1969年に創設した国際準備資産〕の構成通貨となったことと連動し、国際通貨取引におけるこれまでのドルの覇権に打撃を与えるに違いない。また、こうした動きは、中国と米国の現在の経済対立に照らして考える必要がある。こんなふうに明らかな財政的脅威を突きつけられたホワイトハウスは、いったいどう反応するだろうか?
中国のこの試みが成功すれば、他の国々や市場があとに続く可能性もあり、そうなると、前述のとおり米政府は困難な状況に陥ることになる。
「統一朝鮮」が日本のライバルになる日
北朝鮮は、強い経済体制の確立を狙っていると同時に、現在の政治体制と政府の運営形態をなんとか保ちつづけようと必死になっていると、国際ジャーナリストのロバート・D・カプランは考えている。朝鮮半島は中国北東の海上交通路をコントロールしており、しかもその境界線に位置する渤海には、中国の外洋においてもっとも豊かな油田が存在する。
カプランは、北朝鮮と韓国がひとつになって新しい国家が誕生すれば、それは重要な経済国となるという。なぜなら、韓国は技術力を持ち発展している一方、北朝鮮には天然資源と規律正しく教育された労働力があって、互いに相手にはない強みを持っているからだ。また統一されれば、その人口は、日本の1億2700万人に対し、7500万人となる。