自分の意見を通して手柄を立てたがる人間がいたかと思えば、逆に一言も話そうとしない人間もいる。会議は参加メンバーの思惑が交錯する戦いの場でもあるのだ。ピンチに直面したときに役立つ「一言」を紹介する。
ところで、これについてはどうお考えですか?
1時間しか時間をとっていない会議なのに、とうとうと一人で10分も20分も話している人がたまにいる。発言の機会が回ってこない他のメンバーが次第に苛立ちの表情を浮かべても一切お構いなしで、一人悦に入っている様子だ。どうやら“KYタイプの演説家”へどんどん進化しているようである。
「そんなときは何でも構わないので、すぐに答えられそうな質問を投げかけてみる。『こうじゃないですか』と答えてくれたら、すかさず『なるほど、そうですか。ありがとうございます』と話を引き取ってしまう。そして、『では、○○さんは本日の議題についてどうお考えですか』と別な人に話を振ってしまえばいい」と小宮コンサルタンツ社長の小宮一慶さんは自身の秘策を披露する。
演説家タイプの人間は半ば“暴走機関車”みたいなもので、自分ではブレーキがかけられなくなっている。かといって、他人がブレーキをかけようとすると、自分のプライドを傷つけられたと勘違いして、会議そのものを粉砕してしまう恐れがある。小宮さんの秘策は、そんな暴走をスローダウンさせる“引き込み線”なのかもしれない。
いつも小宮さんは「ファシリテーターには『鳥の目』『虫の目』『魚の目』が備わっていないといけない」と説いている。鳥の目は会議全体を俯瞰して見ること、虫の目は複眼で細かい点にまで気を配ること、そして魚の目は話の流れを掴むことを意味している。KYタイプの演説家の話をついばみ、他の人に発言の機会を与えられるのも、会議本来の役割を認識しながら全体のムードを読み取る鳥の目が備わっているからなのだろう。
(宇佐見利明=撮影)