一流と二流を分ける休憩時間の使い方

近年の体操界で、個人的に最も大きかった変化は、2006年の採点方法の変更です。

順天堂大学スポーツ健康科学部准教授 冨田洋之氏
順天堂大学スポーツ健康科学部准教授 冨田洋之氏(TAGARU=衣装提供)

10点満点が廃止され、上限のない採点方法に変わり、以前であれば、演技の中の10の技のうち、難しい技は2~3と決め、演技の質を上げれば高得点がとれたものが、極端にいえば10の技すべて難しい技に挑戦し、さらに完成度を高めて、加点を狙わざるをえなくなりました。当時現役選手だった私はその対応に苦慮しました。

技のレベル以外にも、他国の選手がどんな演技構成で挑んでくるのか予想することが難しくなり、より高度な戦略が必要になったのです。

ただ、「体操競技」の練習時間については、私が現役だった頃とあまり変わりません。基本的には、午前2時間、午後4時間。もちろん、もっと長く練習することもあります。体操競技の練習では、演技を一本通すごとに演技を振り返る時間をとります。筋力を回復させるには、どうしてもインターバルが必要なんです。その休憩時間の使い方に、一流と呼ばれる選手の「違い」が表れます。

数分の間に技の反復をし、次の練習、演技に活かす。身体感覚は重要ですが、感覚のまま曖昧にするのではなく「この動きのどこを直せばより高く跳べるのか」「どうすれば回転が鋭く綺麗に見えるか」など、問題点をはっきりと言語化して認識する。言語化できたものは、本番でもミスは少なくなるものです。