私自身、コーチになってから、感覚を伝えるのではなく、論理的に指導をする重要性を痛感しています。レベルの高い選手ほど論理的なコミュニケーションにも長けているものです。
トランポリンの練習がよいワケ
練習で私が現役の頃と大きく変わったのは、iPadなどで映像の確認が容易になったことです。インターバルの時間ですぐに客観的な視点で「答え合わせ」ができるようになった。このことで練習はたしかに効率化されました。
しかし一方で「映像頼り」になっている部分も出てきました。映像で客観的に取り入れた情報から、問題を発見し、論理化し、いかに自分の中に落とし込めるか。試合は一発勝負なので、最後にその蓄積があるかで結果が変わってくるのです。
今の若い選手のほうが、感覚にすぐれた選手が多いと実感します。特に空中での感覚は、幼い頃の環境から身につくもの。内村航平選手にしろ、白井健三選手にしろ、橋本大輝選手にしろ、子どもの頃から体操クラブで感覚を磨いてきています。
近年、体操教室の現場もどんどん設備が整い、特にトランポリンが普及していることが、若い世代の空中感覚を高めています。体操競技以外の運動にも役立つと思いますし、次世代のアスリートには期待できると思います。
近年、国際大会で日本はロシアと中国の後塵を拝する状況が続いています。先ほど指摘した、「競技の変化」への対応の差もあったと思います。東京五輪では、団体総合の人数が5人から4人に変更されます。この変更は、オールラウンダーが多い日本代表に有利だと感じています。
どのような選手が、どのような技で高い難度、質を高めていくのか。論理化と、戦略を一層突き詰めて、いい成績、金メダルにつなげてほしいですね。
(構成=伊藤達也 撮影=松本昇大)