うまい人は、この「合意形成」のために課題解決の形で話を進めます。例えば研究者なら、「僕はこんな素晴らしい研究をして、こんな成果が出ました」と説明しがちですが、それでは押し売りと同じで、聞くほうは興味が失せます。そうではなくて、「なぜ、その研究を行ったのか」「その研究で何が解決するのか」をまず説明するんです。その研究・技術で何を変えたか、という「変化」にこそ価値がある。そこをまず明らかにすれば、相手は「それだったらお金を出すよ」「それなら応援するよ」という気持ちになってくれるのです。

仕事上の会話で相手を説得、納得させるには、数字をともなうエビデンスを示すのが一番。慣れている人ほどやりがちな、「だいたいこんなもん」「こんな感じでいける」「ドーンと来るよ」などの雰囲気だけの表現はNGです。

ただ、それだけでは聞き手が疲れてくるので、その数字やファクトに基づいて自分のオピニオン、考え、思いを同時に伝えると、相手は納得しやすくなるし、それについて議論をしたくなるんです。例えば「今期は売り上げが70%上がりました」というファクトにオピニオンを加えて、「今期の売り上げは70%上がりました。我々が努力した結果、成果を上げることができました。大成功です」という具合です。

繰り返すようですが、会話やプレゼンは自分語りだけで完結させずに、徹底的に相手を巻き込む必要があります。それにはまず、「引用」が効果的です。例えば、「私は学生時代から水球選手として活躍してきました」なら単なる自己紹介ですが、「私は、みなさんをはじめ多くの人が経験のない、珍しい水球という競技の選手でした」として、その場にいる「みなさん」を「引用」して巻き込んでいく。うまい人は、初対面の相手の名字や役職、社名を使ったりと、他人を使うことに長けています。

距離を縮める技術の極めつきは、「相手の視点で話す」

言葉の言い回しや表現でも、相手を惹きつけることができます。簡単なのが「体言止め」。「我々はこうやって危険性を指摘してきたのです」を、「我々が言ってきたのは、とても重要なこと。危険性の指摘。これによって守られた人命」と厳しめに言う。単調な話では聞き手が飽きてきますから、緩急と抑揚が大事です。

その緩急・抑揚のうち、厳しめに言うのが体言止めなら、柔らかく言うのが「質問と回答」です。「我々の活動はなんだったと思いますか? そう、危険性の指摘なんですよ」と、自分で問いを投げかけて自分で答える。「私のプレゼンテーションテクニックの本、どの層に売れると思います? 一番は大学生なんですよ」とやると、思わず「ほう……」と聞いてしまいませんか? 相手との距離を縮める技術の1つでもあります。