20代管理職が50代の部下を持つ実力主義

組織のリラックスした上下関係は、肩書だけでなく勤務年数や年齢、学歴、性別にも左右されない。そもそも流動的な労働市場で、転職も日本よりはるかに多いフィンランドの職場では勤続わずか数年でも長いほうに入る場合がある。長く働けば働くほど休日の日数などは多くなるメリットはあるが、日本のような年功序列はないし、実力や成果が重視される。

だから20代でも管理職に抜擢ばってきされることがあるし、入社してすぐに責任のある立場にたつこともある。20代で管理職として50代の部下を持っているとか、20代で銀行の支店長をやっているなどの話を初めて聞いた時は驚いたものだが、フィンランド社会を長く見ている今は、何の驚きもない。

現在50代で、20代のリーダーの下で働いている知人のエンジニアに聞けば、「僕は現場でエンジニアとして働きたいのであって、書類を作ったり会議に出たり、部下の管理なんてしたいと思わない。上司が自分の息子ぐらいでも嫌だと思わないし、可愛いよ。若くたって僕たちが支えていくさ」と返ってきた。

フィンランドの内閣は女性の閣僚のほうが多い

さらに、最近は女性が責任のある立場にたつことも増えてきた。共働きが普通で、女性のほうが学歴が高く、学校の成績も優秀なフィンランドでは、就業率も女性のほうが高い。もはや「女性初」というニュースはほとんど聞かれないし、政治の上でも女性の大統領や首相がすでに誕生している。現内閣でも女性の閣僚のほうが多く、党首も女性の数のほうが多くなった。

公的機関では管理職やトップにつく女性の数は男性とほぼ変わらないところまできているが、一般企業では取締役や管理職につく女性の数はまだまだ半数にほど遠い。特にエンジニアリング会社や伝統的に男性が多い分野ではまだまだ女性の数は少ないし、プログラミングなどでも女性はまだ3割だ。男女による産業・職業の偏りや、企業のトップに女性が平均的に少ないこと、さらに平均賃金格差を減らすことはフィンランドのこれからの課題でもある。

ちなみにこの平均賃金格差というのは、同じ仕事をした場合に男女で格差があるという意味ではなく、男性はより給料の高い産業や地位にたっていることが多い一方、女性はそれよりも賃金が低い産業や、契約・時短勤務を一時期することが多いため、平均給与に差が出てしまう。

だが、サービス業など分野によっては女性が圧倒的に多い職場もあり、経営陣がすべて女性ということもある。まだ完全に男女共同参画が成し遂げられているのではないが、女性という性別は昇進の障壁にはならなくなっている。