経営者の中には、食事やクルマ、住まいなどの「豪華さ」を自慢する人たちがいる。なぜ彼らは多額のお金を使えるのか。公認会計士の鳥山慶氏は、「オーナー社長のお金の使い方はサラリーマンとは根本的に異なる。彼らが使えるのは役員報酬だけではないからだ」という――。
サラリーマンと経営者の最大の違いは「使えるお金」
サラリーマンと経営者ではなにが違うか。公認会計士である私は、最大の違いは「使えるお金」の差にあると考えています。
給与が同じ700万円のサラリーマンと経営者を比較してみましょう。700万円のサラリーマンは、そこから社会保険料や所得税などを差し引かれ、手取りは530万円ほど。それが「サラリーマンが使えるお金」です。役員報酬としてもらう経営者の給料も、手取りが530万円になる点はサラリーマンと同じです。
しかし、経営者の場合、例えば売上高が3億円だとすれば、その3億円が「経営者が使えるお金」となります。
株式会社は、所有(株主)と経営(取締役)は分離しており、行き過ぎた役員権限は両者の利害対立、すなわちエージェンシー問題を引き起こします。日産の元会長のゴーン氏に対する高額過ぎる役員報酬や経費の使い込み、不正な隠蔽工作などは、本来、経営のプロとして委任を受けはずの役員が、私利私欲を追求して依頼主の株主価値を毀損した例です。
しかし、所有と経営が一致するオーナー企業は、両者の利害対立は存在せず、株主と経営者の両方の立場から利益最大化を図れるため、経営の選択肢の幅は広いのです。
サラリーマンと経営者では使えるお金が違う結果、両者のお金の使い方や考え方も全く異なります。
どういうことか。具体的に説明していきましょう。