しかしそれも数回でダメになって、最後は歯を抜くことになる。抜いたらそこに部分入れ歯なり、ブリッジなり、インプラントなどを入れますよね。しかし部分入れ歯は両脇の歯にバネをかけて装着しますから、バネをかけた歯に負担がかかり、そこから歯周病が悪化していく。そのスパイラルはなるべく手前で止めたい」

昔はレントゲン写真や過去の経験などで虫歯の進行度合いを判断していたが、いまはダイアグノデントというレーザーを使った測定機器などを使い、数値で経過を追うこともできるようになったこともあり、削ることに慎重な歯科医が多いという。

クリーニングの一歩先のケア方法

「ほかにも最新の治療を紹介すると、『リアルタイムPCR』という検査で歯周病菌を特定し、それぞれの菌の種類と数もわかるようになりました。歯周病は、さまざまな菌の複合感染で起こります。ところがその菌のなかでも特に口腔内で悪化を促進するものがある。それがレッドコンプレックスと呼ばれている3種類の菌(Pg菌、Td菌、Tf菌)です」

これまでは大学の研究室など設備が整ったところでないと菌の特定はできなかったが、いまは口腔内からとったサンプルを専門の機関に郵送すれば分析結果が送り返されてくるようになった。菌の種類が違えば治療法も百八十度変わるというほどではないが、ターゲットの菌を特定し、それに合わせて飲み薬や塗布剤を変えたほうがより効果的なことは間違いなく、治療後に再検査することで効果も客観的に評価できる。

また最近の歯科医院では、歯周病対策として、薬液ジェルを歯に塗布することを勧められることも多い。しかし、難点は唾液ですぐに流れてしまうことだ。その点、マウスピースに薬液ジェルを入れて装着する3DS(デンタルドラッグデリバリーシステム)という方法なら、薬液がしっかり浸透するうえに、1回10分、1日2回だけなので、それほど負担にならない。

「これらの治療を施している歯科医院はまだ全体の1割以下で、健康保険も利きません。ただ非常に重症の方の場合は、これをやるとかなり患者さんの労力が減りますね」

また昔は歯の詰め物をつくるときは、まず印象材と呼ばれる粘土のようなもので型をとり、そこに石膏を流して模型をつくり、そこから歯科技工士がかぶせ物のもとをつくって、それが金属であれば鋳造するというステップを踏んでいた。しかし加工のステップが多ければ、それだけ誤差が生じやすく歯にフィットしづらくなる。

「最近はデジタルデンティストリーといって、口腔内スキャナーでデータを取り込み、歯科用CAD/CAMの技術でかぶせ物を削り出すことができるようになりました。治療の苦痛も減り、完成までの期間も大幅に短縮されましたし、材質もセラミックや特殊な樹脂などですから、金属アレルギーの人にとってはうれしいニュースではないでしょうか」

森永宏喜
米国抗加齢医学会認定医
日本アンチエイジング歯科学会常任理事。東北大学歯学部卒。1992年、千葉県鋸南町に森永歯科医院を開業。著書に『アンチエイジングは“口の中”から!』(ロングセラーズ)など。
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