6階なのに「8609階」のビジネスホテル

こだわる中国人はホテルに行っても、とことんこだわります。「8」が入った部屋にしたいとわざわざフロントに申し出る人もいます。昨年末、私が中国・大連で宿泊したホテルは中級のビジネスホテル。私の部屋は6階でしたが、部屋番号はなぜか「8609」となっていました。

筆者撮影
中国のホテルでは部屋番号の前に縁起のいい「8」を入れることもある

フロントで「8階ですか?」と聞いたところ、「6階です」とのこと。行ってみたら、すべての部屋番号が8で始まっていました。試しに5階にも降りてみたのですが、5階も「8501」という部屋番号から順に並んでいました。そこまでして縁起のいい「8」を使いたいわけですね。

「9」は例外的に奇数ですが、一桁の中で最大数であり、「久」と同じ発音で、「永遠」という意味になることから縁起がいいとされています。日本では「苦」につながるので縁起が悪いという人もいますが、中国では異なります。香港に行ったことのある人は「九龍」という地名を聞いたことがあるでしょう。縁起のいい数字の「9」と、縁起のいい想像上の動物「龍」を掛け合わせた、非常にいい名称なのです。

日中で共通なのは「4」で、両国ともに「死」につなげて考えます。中国ではホテルやマンションでも4階はありません。私が先日大連で泊まったホテルも4階は「会議フロア」と表示されていて、客室にはなっていませんでした。

結婚式のご祝儀で奇数の額を包むのは要注意

そういえば、中国各地にある有名なホテルチェーンに「モーテル168」があります。「168」は中国語の「一路発」(イール―ファー=ずっと発展する)という言葉と似た発音になる、おめでたい名前です。安いホテルチェーンですが、縁起を担いでいるのです。

中国で最も有名な企業、アリババが運営しているサイトは「168.com」。外国人が見てもすぐに気づきませんが、これも縁起のいい数字を並べているのは、中国人には一目瞭然。とにかくこだわりが強いのです。

日本に住む私の中国人の友人は居酒屋の靴箱の番号を必ず「8」や「18」にしていました。ちなみに、私も居酒屋の靴箱や駅のコインロッカーでは、ささやかながら、同じように“実践”しています。

都市部では結婚式のご祝儀も、最近では600元(約1万円)以上ですが、段階的に800元、1000元、1200元、1600元、1800元と縁起のいい数字や偶数にするのが“常識”です。日本でのご祝儀は「割り切れない」などの理由で3万円、5万円などの奇数にするのが一般的ですが、中国では奇数はご法度。

中国に住む日本人が、中国人の結婚式に招待されて「別に日本式でも構わないだろう」と奇数の金額を包んでしまうと、人間関係がこじれてしまうかもしれないので、要注意です。