結婚式は午前11時58分から、引っ越し先が「606号室」なら幸運……。中国では数字に対し、並々ならぬこだわりをもつ人がいる。ジャーナリストの中島恵氏は「中国で『8』は縁起のいい数字。中には『8』が入った部屋にしたいとわざわざフロントに申し出る人もいる」という――。
※本稿は、中島恵『中国人は見ている。』(日本経済新聞出版社)の一部を再編集したものです。
わざわざ正午2分前なのは「8」がつくから
「これを見てください。結婚式の招待状に、開始が午前11時58分からと書いてあるんですが、この中途半端な時刻は一体何なのでしょうか!?」
上海在住の日本人の友人が私に見せてくれたのは「喜帖」(シーティエ)と呼ばれる結婚式(披露宴)の招待状。中国では、最近はSNSで招待状が届き、出欠をすぐに返信できるスタイルが増えてきていますが、通常は赤いカードに日時や会場名、新郎新婦の名前などが記されています。
なぜ正午からではなく、午前11時58分からなのか――。日本人が不思議に思うのも無理はありません。
これには中国ならではの“特別な理由”があります。
中国で「8」は縁起のいい数字。そのため、おめでたい結婚式や店の新規オープンなどの開始・開店時刻などを、あえて午前11時58分や午後5時28分など、「8」を入れた時間にすることがあるのです。大都市では最近あまり見かけなくなりましたが、両親や年配者が気にして、このような時間帯にわざと設定する人もいます。友人が受け取ったのは、そんな中国らしい招待状だったのです。
もちろん、正午や午後5時、午後6時などに始まる結婚式も少なくありません(といっても、中国では、時間厳守ではないので、実際に始まる時間は、結局少し遅れたりするのですが……)。半端な時間は、あくまでも招待状の記載だけです。