病院に到着して超音波(エコー)で見ると、左心室(左のポンプ)が動いていません。3本の冠動脈のうち真ん中の「左前下行枝」が詰まっていたので、すぐにステント術となりました。
ステントはステンレスなどでできている金属の筒で、詰まっていた血管を押し開いた後に設置し、血流を再開通させる医療器具です。緊急時のその場しのぎという意味もありますから、私自身も南淵医師から「何年かすれば、また動脈が詰まることがありますから、心臓血管外科でバイパス手術が必要になります」と警告されました。
実際、8年後の12年12月22日に再び胸痛に襲われたあげく、開胸して冠動脈バイパス術を受けています。手術時間は8時間に及びましたが、その後は本当に快適です。
私は最初から南淵医師をあてにしていたので、あえて救急車を呼びませんでした。一刻一秒を争う事態ですから救急車を呼ぶという選択は間違いではありません。しかし、搬送先を自分で選べないデメリットがあります。
まして日本胸部外科学会、日本心臓血管外科学会、日本血管外科学会の3学会が共同で認定する「心臓血管外科専門医」は、19年7月現在、2214名のみです。全国におよそ32万人いる医師のうちの0.7%にすぎません。さらに、心臓手術実績が年間100例以上ある施設は限られ、そこに搬送されるケースはまず稀です。
最低でも1日1リットルを飲むべし
したがって現実には緊急搬送先でステント術を受けた後、一生モノのバイパス手術をしてくれる医師と施設を探すことになるでしょう。同窓会名簿の職業欄で「医師」を見つけたら、自宅や勤務先近辺に評判のいい心臓血管外科がないか、さりげなく聞いておくといいと思います。
心筋梗塞の既往や不整脈など心臓に問題がある人が突然死に至るプロセスには「低血糖」「脱水」「過労」「アルコール」が絡んでいます。
特に飲水量が減るこれからの季節は、心臓に何も問題がない方でも脱水の危険があります。心臓に不安があればなおさらで、意識をして起床後の200ミリリットル、就寝前の200ミリリットルを含め、最低でも1日1リットルの水を飲むようにしましょう。
また、飲酒後の入浴は絶対に避けること。アルコールの血圧低下作用に加えて、寒い洗面所と熱い湯の寒暖差で血圧が乱高下し、加齢や動脈硬化で弱っている心臓の動脈に負担がかかります。致命的な心血管疾患で突然死するケースはこうした「ヒートショック」の典型。「飲んだら入浴しない」を徹底してください。
脳血管疾患についてはどうでしょうか。こちらは突然死のリスクが小さい半面、半身不随や寝たきりになりかねない怖さがあります。