医者には患者目線でいてほしいものだが、実際には話の通じない、自分勝手な医者に悩まされたことがある、また悩んでいる人は多いだろう。そんなコミュニケーションがとれないタイプのヤブ医者の特徴について、裴氏は「患者を主語にするのではなく、医者や病院を主語にして話す」ことを挙げる。

「医者に求められるのは、患者さんに対する『解説力』です。専門用語を連発したり、患者のリテラシーのなさをいいことに説明不足のまま自分のペースで診療を進める医者は、解説する力に欠けています。対して、患者さんに必要なのはこの治療や薬です、という話し方をする医者は、自然とわかりやすい説明をするようになる。

また、医療は不確実性の学問。100%正しいということはありえません。『絶対に治る』『必ず効果がある』『間違いなく』など、まともな医者なら口にできない。そういった形容詞や副詞を使う医者は眉唾物です。嘘をついているか、信じられないほど凄い技術を持っていて自信があるかのどちらかですが、後者は普通の感覚ではありえません。

外的損傷など、診断結果がわかりやすい外科治療では判断が可能な場合もありますが、内科の疾病については、診断しても、例えば初期の段階では『風邪です』と断定はできず、風邪の可能性が高い、としか言えないんです。症状がだんだん変化していって、治療の効き目が出てはじめて、後から考えれば、『やはり風邪でしたね』と言えるだけ。『後医は名医』という言葉のとおりです」

厚生労働省が定める医療広告ガイドラインでも、「絶対に」「必ず治る」「100%」などの言葉を使用することは禁じられている。このような「不確実性を否定する言葉」を使う医療機関を避ける判断力は、患者としても最低限身に付けなければいけない。

「患者さんは医者に100%を求めてしまうんです。不安になればなるほど、早く病名を確定してほしいし、絶対に治るとか確実な治療法を知りたがるのは、当たり前の心理。そのギャップを、いかにうまく説明して、不安を解消できるかが医者の実力と言えます」

「様子を見ましょう」そのセリフの真意

病院に通っていると、「様子を見ましょう」「何か変化はありましたか?」といった言葉を、医者から度々聞くことになる。「様子を見るって、よくわからない。放って置かれているんじゃないか」「変化ってどこまでが変化なのだろう。それを検査して調べてほしいのに……」とモヤモヤとした気持ちになった人もいるのではないだろうか。

しかし、これは「経過観察」という1つの技術なのだと裴氏は言う。