アルコールで亡くなるのは男性が圧倒的に多かった

ひとり暮らしで、朝から酒を飲み続ける。結果、肝臓を悪くして消化管出血で亡くなる。そして、法医学教室に運ばれて解剖される――そうした経過をたどるのは、これまで圧倒的に男性が多かった。私たちの法医学教室で解剖したアルコール依存症の人は、これまで男性が83.9%、女性は16.1%だ。

その死因は、3分の1が消化管出血などの病気で、3分の1は酔って転倒した際などに事故で亡くなるといった外的要因、残りの3分の1は不詳だった。病死の場合、その半数以上が消化器系の病気で亡くなっており、脳血菅系、呼吸器系、循環器系と続く。

ただ、「依存症」とまではいかなくとも、解剖する人の3割近くが、お酒を飲んだあとに亡くなっている。

昨今、働きに出る女性が増えたことで、彼女たちが外出する機会も多くなった。総務省が発表した2019年6月の「労働力調査」で、女性の就業者数が初めて3000万人を超えたという。15~64歳女性の就業率も上昇していて、2019年に入ってからは、安定して70%台をキープしているようだ。

男性に多かった死に方をする女性が増える

日本では、「男女雇用機会均等法」が施行され、女性の社会進出が大々的に謳われたのは1986年のことだ。ただ、安倍政権がアベノミクスの成長戦略として女性の活躍を推進する方針を打ち出し、本格的な対策がとられるようになったのは、まだここ数年の話である。その裏側にある労働人口の減少や世帯収入、税収の減少などを鑑みると、今後、女性が社会の貴重な労働力としてさらに期待されることは間違いない。

経済的に豊かになり、結婚をしない(していない)女性も増えている。女性の場合、男性とは逆で「高収入な女性ほど未婚」であるという統計も出ている。つまり、自由になるお金がある人ほど、生涯未婚率も高い。

今後、女性の独居者は間違いなく増えていくはずだ。そうなれば、外食や飲酒習慣の増加といった独居男性に似た生活様式を取るようになり、女性の“男性化”が進むともいえる。私が危惧しているのは、こうした生活の男性化により、これまで男性に多く見られた死に方をする女性が増えていくのではないか、という点だ。