内閣改造に伴う人事で“復活”

初めてとりまとめを主導した2020年度の税制改正大綱は、大企業がため込んだ内部留保を投資に回すよう促す税制や、次世代無線通信規格「5G」に投資した場合の減税などが柱だ。かつて税制は「インナー」と呼ばれる税に精通した議員の主導だったが、今回は甘利明氏が安倍晋三首相の意向を最優先に落とし込んでいった。

自民党税制調査会長 甘利 明氏(時事通信フォト=写真)

「安倍お友達内閣」筆頭格の甘利氏は、1983年新自由クラブで初当選し、86年に自民党へ。山崎拓元副総裁の派閥に所属したが2006年、反安倍の山崎氏に従わず安倍支持に回り、第1次安倍政権で経済産業相に起用された。12年の総裁選では安倍再選に貢献し経済財政政策担当相に就任。

ところが16年1月に建設会社からの金銭授受疑惑が浮上。秘書が一部を不正使用したことなどの責任を取ると涙ながらに閣僚を辞任した。

しかし安倍首相は甘利氏の政治的手腕も評価し、見捨てなかった。自分を支える人は徹底的に大切にする。時に「首相の立場」より「個人的な恩返し」に走る。甘利氏は、斡旋利得処罰法違反で告発されたが不起訴となったこともあり、18年には党選対委員長に起用され、「刑事事案になっていない」と胸を張った。

19年の内閣改造に伴う人事で、税制調査委員会の宮沢洋一会長が瑕疵もないのに小委員長に降格、甘利氏が会長に。自身は幹事長や政調会長を希望していたがかなわず、それでも安倍首相が配慮した人事。党内の反発もなし。甘利氏の復活劇は“安倍王朝”の隆盛を印象づけている。

甘利 明(あまり・あきら)
自民党税制調査会長
1949年生まれ。神奈川県出身。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。83年衆議院議員初当選。2019年9月より、自民党税制調査会長に就任。
(写真=時事通信フォト)
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