「ふるさと」とは関係ない金券を配る自治体も登場

一方で、自治体には大きな変化をもたらした。納税者に地場産品などの返礼品を送ることで、税収を増やすことができるようになったからだ。

地方では人口減少が大きく、税収減に悩んでいた。魅力ある商品を用意すれば、自治体自身のPRにもなる。「予算を使うのが仕事で、税収を増やすことを考える事がなかった自治体職員の意識が大きく変わった」と近畿地方にある山間部の市長は言う。実際、さまざまな創意工夫でふるさと納税集めに奔走する自治体職員が生まれた。

「仮に寄付額のほとんどを返礼品として返しても、地域の産業振興につながるので、自治体にとってはプラスだ」と九州にある市の市長は言う。市の判断で産業振興予算を付ける代わりに、返礼品に採用して納税者の「選択」に任せた方が、本当の意味での産業振興になる、と語る首長もいる。

そんな中で、「悪乗り」する自治体も現れた。地域の産業振興には必ずしも直結しない全国共通の商品券やギフト券、全国ブランドの商品などを返礼品として贈るところが出てきたのだ。ネットショップばりの品揃えの中から納税者が返礼品を選べる仕組みを作ったところもある。その典型的な例が大阪府泉佐野市だ。同市は2017年度に135億円を集めてトップになり話題を呼んだ。

泉佐野市は総務省に反発して「閉店セール」

もともと、ふるさと納税制度に批判的だった総務省にとって、制度を見直す格好のチャンスになった。2019年6月から新制度に移行することを決める一方で、総務省が繰り返し通達で求めていた、地場産品の利用や返礼品の金額割合を抑えることに従わなかったことを理由に、大阪府泉佐野市、静岡県小山町、和歌山県高野町、佐賀県みやき町を新制度の対象から除外することを一方的に決めた。

小山町などは総務省に恭順の意を示したが、泉佐野市は猛烈に反発。市長が先頭に立って総務省批判を展開し、副市長による記者会見を東京都内で開いたりした。また、制度から除外される5月末までの限定として、ギフト券を大盤振る舞いするなど「閉店セール」を実施、テレビの情報番組などでも大きく取り上げられた。

この結果、逆に泉佐野市の宣伝となり、2018年度は497億円を集めて圧倒的なトップになったほか、2019年度も2カ月だけとはいえ、多額の寄付を集めたとみられる。

泉佐野市は新制度から除外した総務省の決定を不服として、「国地方係争処理委員会」に申し立て、2019年10月に委員会は、「過去の募集方法を根拠に除外するのは改正地方税法に反する恐れがある」と指摘、総務省に再検討を求めた。それでも総務省は除外方針を変えなかったため、泉佐野市が高裁に提訴している。