総務省の「再分配」は本当に公平なのか

その後も総務省と泉佐野市の全面対決は続いている。総務省が全国の自治体に分配する地方交付税交付金の2019年度12月分の特別交付税分を総務省が減額した。ふるさと納税で多額の寄付を集めたことを理由にした減額に、泉佐野市は「本市を狙い撃ちにした嫌がらせだ」と反発している。

もっとも、泉佐野市のような「やり過ぎ」の自治体との係争は、総務省にとっては願ってもないこと。本来は住民サービスに使われるべき税金が他の自治体に回り、しかも返礼品で納税者に戻っている、という批判を展開する格好の具体例になっているからだ。

では、総務省が行う地方交付税交付金による再分配は、本当に「公平」なのだろうか。全国に1765ある自治体のうち、財政が黒字で交付金を受け取っていない自治体(不交付団体)はわずかに86である。圧倒的多数が財政的に自立していないのだ。自治体の自主財源を増やして、財政自立を求めていく方針だったはずだが、不交付団体は一向に増えていない。再分配機能に名を借りた国による地方支配が続いていると言っても良い。

しかも、地方交付税交付金の総額は15兆2100億円にのぼる。ふるさと納税がいくら増えたと言っても5000億円だ。

納税者が「税金の使途」を決める動きを止めるな

だが、それでも総務官僚にとっては目の上のたんこぶなのだろう。泉佐野市のように財政支出を圧倒的に上回る自治体が出てくれば、実際に起きているように、総務省の言うことを聞かなくなる。住民からの歳入よりも、ふるさと納税による寄付額の方が大きい自治体も数多く出現した。

納税者の意識も変わってきた。ふるさと納税として寄付する際、その資金の使途分野を選択できるようにする自治体が大きく増えてきたのだ。総務省の調査では全体の95.5%が選択できるようになっている。分野だけでなく、具体的な事業まで選択できる自治体も20.1%に達している。

また、返礼品なしで、災害復旧などに寄付するものや、自治体が新規事業を掲げて原資としてふるさと納税を募る「ガバメント・クラウド・ファンディング」なども広がっている。

つまり、ふるさと納税をきっかけに、納税者が、自分が税金を払う自治体を決め、払った税金の使途も決めるという動きがジワジワと広がっているのだ。民主主義国家としては当たり前のこととも言えるが、これは税収を何に使うかを事実上決める権限を握り続けてきた官僚組織にとっては「脅威」に他ならないわけだ。

新制度によって、2019年度のふるさと納税額が、霞が関の期待通り頭打ちになるのか。はたまた一度根付いて国民に支持されている制度はそう簡単には衰えないのか。大いに注目すべきだろう。

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