アメリカの大手企業とはケタ違いの差がある

ZHDの川邊健太郎社長は「日本、アジアから世界をリードするAIテックカンパニーを目指していきたい」と抱負を述べている。一方、LINEの出澤剛社長は統合に動いた背景に巨大化するGAFAやBATの存在があったとして、「ネット業界は優秀な人材やデータなどすべてが強いところに集約する構造。2社が一緒になってもアメリカの大手企業とはケタ違いの差がある」と危機感を隠さない。

LINEの親会社NAVERは韓国系。ソフトバンクの孫正義会長は韓国では圧倒的に人気も知名度もあるし、相性からすればヤフーとLINEの経営統合は自然の流れともいえる。LINEはSNSでは日本一だが、どうやって事業をお金に換えるかというマネタイズ(収益化)の部分で問題を抱えている。キャッシュレス決済のブームに乗ってLINE Payを打ち出してはいるが、大幅な赤字の垂れ流しになっている。

同じSNSのフェイスブックは、広告モデルでのマネタイズをしつこくやって収益の軸にしているが、LINEにはそれがない。親会社のNAVERは「無料」で囲った8000万人のユーザーを十分にマネタイズできていない点を心配し、おそらくほっとしているだろう。

一方のZHDは収益の軸がわからなくなるほど事業を多角化してきた。ZHDの傘下にはeコマース(電子商取引)サービスやポータルサイト運営の「ヤフー」のほかに、電子決済の「PayPay」、無料動画配信サイトの「GYAO」、電子書籍の販売サイト「イーブックイニシアティブジャパン」、オフィス関連商品の販売、その他配送事業の「アスクル」、高級ホテルや旅館専門の予約サイト「一休」、金融系では「ジャパンネット銀行」に、クレジットカード事業の「ワイジェイカード」などがある。ファッション通販サイトのZOZOはTOB(株式公開買い付け)によって連結子会社化を完了している。

このうちPayPayは認知度アップに100億円還元キャンペーンを展開するなど、ソフトバンク孫会長の肝煎りで初期投資に資金をかけてきただけあって、将来価値は高いと言われている。しかし、これまたキャンペーンを止めれば決済の定番となるかどうかに不安がある。また、これだけルーツの異なる事業を寄せ集めると一体となって経営していくのは非常に難しい。下手をすれば急速なM&Aで子会社を抱えすぎて収拾がつかなくなったライザップグループのようになる恐れもある。