一緒になって何をやるのか

それぞれに課題を抱えたZHDとLINEが一緒になって何をやるのか。統合によって何が補完され、課題がどのように解決していくのか。現状から絵図は見えてこない。組織図上は双方の親会社であるソフトバンクとNAVERが折半で共同出資した新会社が筆頭株主になってZHDを傘下に置き、その下に100%子会社としてヤフーやLINEが入る。私は40年以上コンサルティングをやっているが、そんな統合形態でうまく経営しているケースを見たことがない。

重複はしているだろうが、確かにLINEの8000万人というユーザーは魅力的だ。しかし、たとえばLINEから入ったユーザーが一休を利用するイメージはあまり湧かない。どちらかといえば富裕層ではないLINEユーザーが、一休が取り扱うような高級ホテルや旅館にどれだけ関心を寄せるだろうか。やはり求めるのは楽天トラベル的な手軽さであり、会社にも家庭にもバレずにポイントを稼いでヘソくれるお得感だろう。

PayPayの決済機能をLINEに持ち込み、8000万人のLINEユーザーの嗜好に適うようなサービスを一元的に提供する。一つ一つ吟味してそうしたことを立体的に展開できれば、統合のシナジーは出てくるだろう。私がZHDの社長なら、シャカリキにこれをやる。LINEも含めて各子会社から企画能力を持った優秀な人材を引き上げて、そこですべての戦略企画をやる。そこで決めたことを子会社に実行させる。各子会社がバラバラに動くことは明確な戦略が動き始めるまで控えてもらう。

ところが現状のZHDはあくまで財務的なホールディングカンパニーで、統合的な戦略を企画立案する機能は持ち合わせていないようにみえる。そのうえZHDの共同CEOには川邊氏と出澤氏が就いて、それぞれ代表権を持つという。しかし、やはり経営マインドというのは、EMS(電子機器受託製造サービス)で世界最大手になった台湾の鴻海精密工業のトップ、郭台銘氏のように、1人の人間が構想し、指揮、命令できるようでないといけない。彼らが目標にしているアリババも、創業者のジャック・マーが骨格をつくった。ソフトバンクも日本のヤフーも創業社長の情熱が成長の原動力だったのだ。

強者と強者が一緒になっても1+1=2にならず、1.6くらいにしかならないのは企業合併ではよくあることだ。ZHDに企画機能と権限を集約しない限り、専門店を集めただけの百貨店のようになる可能性が高い。そこにワンフロア貸し切りのLINEが大型店として入っただけでは、パズルがうまくはまるようなシナジー効果は期待できない。