渋井哲也『ルポ 平成ネット犯罪』(ちくま新書)

この事件で思ったことを自由回答で聞いた。「10人目になりたい」「うらやましい」「一緒に死にたい」「私も殺されたかった」と、白石に殺害されたかったと思ったのは14人いた。

――どう思うか?

「驚きです。その人たちはレイプされて殺されることもあるということを知っているのか?」

――家族や被害者にこの時点で言いたいことはあるか?

「家族には『ごめんなさい』かな? いや、違うな。『もう忘れてください』だな。遺族にも『忘れてください』と言いたいです」。

30分が過ぎ、立会いの拘置所職員が「時間です」と、会話を制止した。面会室のドアの向こうに白石は消えていった。

「リアルタイムメディア」が誕生させた男

豊川市主婦殺人事件などの「人を殺してみたかった」といった平成12年(2000年)頃に日本中で議論になった殺人動機のような側面があるのだろうかと想像していたが、性的欲求を満たすための凶行であり、しかも白石の受け答えはしっかりしていて、特に異様な感じがしなかった。だからこそ猟奇性が見える気もする。

リアルタイムメディアがこうした男を誕生させたという面もある。だからといって、メディア自体が悪ではない。多くのユーザーは普通に使っている。だからこそ、狂気が見える。

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