ツイッターでつながった「自殺志願者」
たしかに、入手した情報では、〔@死にたい〕とやりとりしていたのは24人。〔@首吊り士〕とやりとりをしていたのは5人だった。
――スカウト時代は?
「出会い目的ではないが、アカウントは10個ありました。この時のアカウントは、警察に捕まった時に、削除に同意をさせられました。なので、スカウト時代のアカウントだ、とあるものは、自分のものではない。ダミーですね」
事件発覚当時、確認できるアカウントで古いのは平成28年(16年)3月に開設した「パチプロ~」というアカウントがあったが、ダミーということか。
「それに、風俗の女性が取材をされていましたが、スカウト時代に知り合った女性です。この時に会っていたことと、事件について関連づけて話をしているようですが、関連はない」
――事件では9人を殺害し、バラバラにしているが、そもそも、これらのアカウントを使って会ったのは何人だったのか?
「13人です」
――なぜ4人は無事だった?
「4人のうち1人は男性です。お金もなさそうだった。もう1人は、事件を起こした8月から10月まで付き合っていました。部屋にクーラーボックスがあったのを見て逃げ出した女性もいました。残りの1人は10日間だけ一緒に住んでいました」
前回の面会では恋愛はずっとしていないと言っていたが、事件直前は恋愛をしていたということか。恋愛感情はないが、付き合っていたということなのか。このあたりは聞けなかった。
昏睡状態のままでのセックスに目覚める
――なぜ9人は殺害したのか?
「1人目は早く口説けた。お金を持っていることが分かった。ヒモになろうと思ったんです。アパートの契約までしてくれました。お金を出してくれました。しかし、他にも男がいることが分かりました。ということは(自分を捨てて)その男を選ぶかもしれない。相性のいい男性を探していましたから。もしそうなら出て行けと言われるかもしれない。殺すしかないと思った」
――2人以降はなぜ殺害した?
「(被害者が)昏睡状態のままでのセックスに目覚めてしまった。でも、そのまま帰らせようとすると通報されるかもしれない。執行猶予中だったので、見つかれば、今度は一発で実刑になるかと思った」
――(3人目の殺害になる)男性も殺せた?
「酒を飲ませた。酒には睡眠薬と安定剤を入れていた。眠ったところを絞殺したので、難しくはなかった」
――逮捕後、「本当に死にたい人はいなかった」と供述しているが、その意味は?
「DMなどで悩み相談になることがあったが、それぞれに理由があるということ。学校に行きたくないとか、家にいたくないとか、彼氏にふられたとか。ある女性はよくよく聞くと、『家出をしたい』と言っていた。『なぜ?』と聞くと、『母親の管理がきついため』ということだった。そこで『うちに来る? 養うよ』と誘うと、簡単についてきた。こんな風に理由があったんです」
発覚を恐れて殺害、バラバラに
ネットナンパの手法の一つに、相手の相談にのるというのがあるが、まさにネットナンパをしていた。その過程で、昏睡状態の相手とのセックスに快楽を覚えるが、事件の発覚を恐れて殺害し、バラバラにする。それを繰り返したに過ぎない。ただ、ツイッター由来の事件は見つかりやすいはずだ。そこに躊躇はなかったのだろうか。
――見つかるとは思わなかったのか?
「1人目の女性を殺害する前に、過去のバラバラ事件がなぜ発覚したのかを調べたんです。山の中へクーラーボックスを運んでいる途中に職質された、などが書いてあった。それぞれの事件発覚に該当しない方法を実行しようと思ったんです。携帯電話は長い間、放置しないと警察は位置情報を特定できない。このことは、前回に逮捕された時、刑事に教わったんです。だから、殺害後、携帯を破壊した」
――殺害は躊躇しなかったのか?
「それはかなりある。殺害後は頭痛や吐き気があった。それに殺害しても入手できるのは、最大で50~60万円。売春で捕まっているのでスカウトはできない。詐欺や窃盗のスキルもない。ヒモになって女性に貢いでもらうしかない。そんな風に考えて、天秤にかけた。殺害するのは勇気がいった。しかし、1人殺害することで、それを乗り越えた」
――被害者は10、20代が多かった。30代以上は外したのか?
「誰を取材しました? OLの女性ですかね? お金を持っていればいいです。30代でも40代でも」
「10人目になりたい」「私も殺されたかった」
――9人殺害となると、死刑になる可能性が高いがどう思っているのか?
「1人目を殺害した時点で、どのくらいの罪になるのかを調べました。強盗、強姦、殺人となるので、死刑は意識しました。そのため、死刑を回避することを考えたんです。殺人ではなく、同居人が自殺をしたことにして、遺棄しただけにしようと」
私の取材に「10人目になりたい」と言った人は少なくない。座間事件に関するアンケートをとった(平成29年11月20日から平成30年3月1日まで)。方法はグーグルアカウントで利用できるアンケートフォームを使った。そのアンケートを、筆者が利用するツイッターカウントでつぶやいた。回答者55の中で、有効なメールアドレスが記入されていた回答は52件(性別は、男性13、女性38、その他1。年代は10代12、20代18、30代9、40代5、不明8。職業は学生19、会社員10、無職9、フリーター7、自営業4、その他3)。