同社では「家族客の多い土日は好調だが、サラリーマン客が減った平日の落ち込みが響いた」と説明したが、まさに喫煙者の店離れが原因だといえる。平日は、月・火・水・木・金曜と5日あり、土・日曜は2日しかない。差し引きマイナスは当たり前の結果だった。そもそもお酒をたくさん飲む場に子どもを連れて行って危険はないのだろうか。ファミリー向けをアピールする串カツ田中にはぜひともアルコールも禁止してほしい。子どもを店に連れてくるよう宣伝しておいて、飲酒による事件が起きたら店は知らんぷりというのでは社会的責任が果たせないのではないのだろうか。タバコだけを禁止する金儲け至上主義で、売り上げをただ落とした経営者は、即刻辞任すべきだと思う。

実は、禁煙が業績に影響しているのは串カツ田中だけではない。「ちょい飲み」ブームの火付け役ともいえる「サイゼリヤ」も全席禁煙になった店舗で売り上げ減少に苦んでいるという。サイゼリヤは、本格的なイタリア料理を安価に楽しめることで客を集めて急速に規模を拡大したファミレスチェーンだが、なんといっても人気の秘密は格安のアルコール類だ。1000円以内でべろべろに酔えるほど飲める居酒屋が「せんべろ」と話題になったが、サイゼリヤワインはまさに「せんべろ」の優等生。居酒屋のように利用する客も多く「サイゼ飲み」という言葉も広まった。しかし、サイゼリヤは17年末に全店舗を禁煙化する方針を表明して以来、既存店の客数は前年度割れが続き売上高にも影響が出ている。酒類を多く消費する喫煙客が離れ、仮に来店してもタバコの吸えない場所には長居しないことが影響しているのだろう。

懐かしき銀座4丁目ドトールの思い出

以前に対談させていただいた「浅草おかみさん会」の冨永照子さんは、老舗のそば店を経営しながら、浅草でさまざまなイベントを企画して集客に成功し、浅草を観光地として復活させた伝説的な存在だが早くから改正健康増進法による禁煙の影響を危惧していた。「お酒を飲むとタバコが吸いたくなるでしょう。禁煙にすると店の外に出て吸うから、酔いが醒めて帰りたくなるもの」と喫煙客の心理を分析していたが、まさにその通りである。

私のようなヘビースモーカーはタバコを吸えない場所には長くいられない。全席禁煙の店には近寄らないようにしているが、仕事上の付き合いでどうしても入らなければならないときには、すぐに用事を済ませてできるだけ短時間で店から出る。もちろん店に余計なお金は落とさない。

禁煙よりも分煙のほうが望ましいと考えている人は多い。6月に日本生産性本部がまとめた19年度日本版顧客満足度指数(JCSI)調査によると、カフェ分野では、1位ドトールコーヒー、2位カフェ・ベローチェ、3位スターバックスで、禁煙派のスタバを分煙派のドトール、ベローチェが上回る結果となった。評価理由に「分煙」を挙げる人が多かった。この結果は、この年に限ったものではなく、スタバの顧客満足度は、例年、分煙のカフェよりも低い。調査対象は分煙派、絶対禁煙派などと分けることがないので、「自分はタバコを吸わないが喫煙席があってもいい」と考えている人も存在する可能性があるということだ。