短距離ミサイルを問題視しなかったのは失態だった

次に産経新聞の社説(主張、12月17日付)。見出しは「北朝鮮の挑発 『攻め』の交渉で押し戻せ」である。

「追求すべきは、北朝鮮の核・弾道ミサイルの廃棄である。挑発抑止や交渉継続のため、贈り物を差し出すことなど論外である」と書いた後、産経社説もトランプ氏を批判する。
「トランプ米大統領は、北朝鮮の核実験、ICBM発射中止を首脳外交の成果として挙げる。問題なのは、これを守ろうと正恩氏に無用の配慮をしてきたことだ」
「日本への脅威であり、国連安全保障理事会の決議違反である短距離弾道ミサイル発射をトランプ氏が問題視しなかったのは失態ともいえる。この結果、北朝鮮は短距離ミサイル発射を繰り返し、技術を向上させた。核実験、ICBM発射の中止撤回の構えが正恩氏の外交カードとなった」

「無用の配慮」「失態」という指摘は同感だ。トランプ氏はしたたか極まりない金正恩氏に手玉に取られてきた節がある。

アメリカの国連大使のほうがずっとしっかりしている

そのうえで産経社説は「トランプ氏に求められているのは『攻め』の姿勢ではないか。北朝鮮の完全な非核化に向け、状況を前に進めることである」と主張する。これも正論である。

核を搭載したミサイルがアメリカ本土に届かなければ問題ないという考え方は、自国第一主義そのものである。自分の国さえ安全であればいいという論理は、国際社会では通用しない。同盟国の日本や韓国が短距離ミサイルのリスクに晒されている現実をトランプ氏はどう理解しているのか。

産経社説は続ける。

「その意味では、安保理協議に消極的だった米国が主導し、公開会合を開催したのはよかった。米国連大使が、短距離弾道ミサイルも『安保理決議違反』と断じ、さらなる挑発には『安保理が行動を起こす』と表明した」
「新たな決議違反があれば安保理として一致して非難の声を上げ、制裁強化の準備に入る。その意思表示と受け止めたい」

大統領選ばかりを気にするトランプ氏に比べ、アメリカの国連大使のほうがずっとしっかりしている。トランプ氏はこの大使の発言を耳に刻み込んでほしい。