経済的な観点からは、残留が合理的な判断であるが…
右派の読売新聞は12月14日付社説で、ジョンソン氏の圧勝をこう書き出している。
「英国が欧州連合(EU)から来年1月末に離脱する道が大きく開けた。英国と欧州の将来に重大な影響を与える審判が下されたと言えよう」
前向きな捉え方だが、否定的な分析も忘れない。
「英国の進む方向は明確になったが、課題は多い。離脱は短期的には英国経済にマイナスになるというのが大方の見方だ。経済的な観点からは、残留が合理的な判断であることに変わりはない」
やはり離脱せず、ヨーロッパ諸国と仲良くやっていくのがベストなのだ。
残留派の票が小選挙区制のもとで議席につながらなかった
さらに読売社説は「英国社会での離脱派と残留派の対立は深刻だ。世論調査では、両者の数字は拮抗している」と指摘し、こう主張する。
「今回の選挙結果は、残留派の票が労働党と小党に分散し、小選挙区制のもとで議席につながらなかった側面が大きい。ジョンソン氏は、国民の分裂を修復し、融和を促していかねばならない」
分裂や分断は自国の利益を最優先するトランプ氏のアメリカでも、大きな社会問題となっている。読売社説が主張するように、ジョンソン氏は離脱派と残留派の対立を和らげる政策を一刻も早く打ち出す必要がある。
読売社説はジョンソン氏のポピュリズムと自国第一主義の問題に触れていない。そこがとても残念である。
今後もイギリスのEU離脱問題で社説を書く機会は何度もあるだろう。そのときにはぜひ、ポピュリズムと自国第一主義の問題にまで言及してほしい。これは1人の読者としての思いである。