「イギリスが目指す理念と将来像を国際社会に示せ」
12月13日付の朝日新聞の社説は、選挙戦の模様をこう書いている。
「議会の混沌が長引いたため、英国民の間では疲労感が広がっていたという。最大野党の労働党は離脱か残留かを表明せず、両方の支持者を失った」
「『何が何でも』と強硬姿勢を貫いてきたジョンソン氏は、党内の穏健派を追放した。『やり遂げる』と大書きした掘削機を運転して壁をぶち抜くパフォーマンスも見せた」
朝日社説は「そうした言動の派手さとは裏腹に、離脱後の英国の姿は一向に見えていない」と指摘し、こう主張する。
「欧州統合の流れに背を向けて、英国はこれからどんな秩序を志向するのか。多国間協調を重んじるのか、それとも単独行動の傾向を強めるのか」
「離脱に踏み切る前に、ジョンソン氏は新たな英国がめざす理念と将来像を、国際社会に明示してもらいたい」
ヨーロッパを代表するイギリスだ。かつては大英帝国の名をほしいままにした国家である。EU各国だけでなく、日本やアメリカを初めとする世界中の国々がその一挙一動を見ている。ジョンソン氏にはしっかりとイギリスの行く末を示してほしい。
なぜ朝日社説は「自国第一主義の問題」を追及しないのか
朝日社説は書く。
「ジョンソン氏の討論発言や、保守党のマニフェストを見る限りでは残念ながら、内向きな姿勢が目立つ。とくに移民政策では、資格審査を強め、非熟練人材の受け入れ抑制を強めるとしている」
左派の朝日社説としては、右派的な移民政策が許せないのだろう。さらに朝日社説は指摘する。
「財政では、この9年間保守党が守った緊縮路線をやめて、公共投資を増やすという。移民規制と財政的なテコ入れにより、『主権を取り戻した』英国の復活を強調する思惑のようだが、そこには閉鎖的な自国第一主義がちらつく」
朝日社説も沙鴎一歩と同じく、ジョンソン氏の自国第一主義を問題視している。「自国第一主義」であることは間違いない。ならばそこを社説として追及してほしかった。自国第一主義の問題点を分かりやすく浮き彫りにするのが、新聞の社説の役目ではないか。