モネは一体何をやろうとしているのか

では、ソフトバンクとトヨタはMONETでどのようなMaaSを実現しようとしているのか。それは、一言で言えば、「MONETプラットフォーム」を構築することです。

車両・配車API(Application Programming Interface)を通して、自動車メーカーや運送会社などが持つMaaSデータと接続。サービスAPIを通して、コンビニ、宅配、スーパー、医療などのサービサーと接続。そうして、「MONETプラットフォーム」は移動データ、ルート検索ログ、車両ログといったデータを集約・管理することによって、MaaSデータとサービサーを最適につなぐ役割を担うわけです。

MONETの代表取締役社長兼CEOに就いたのは、ソフトバンクの通信事業をCTOとして技術面で支えてきた宮川潤一氏です。宮川社長は、「既存交通の高度化(マルチモーダル)」「新たなライフスタイルの創出(マルチサービス)」「社会全体の最適化(スマートシティ)」というMaaS戦略の3本柱を掲げました。

これら3本柱を実現することで、MONETプラットフォームでは、既存の交通事業者同士の連携が図れるようになり、ユーザーは複数の交通手段を柔軟に組み合わせた高度で効率的な移動を簡単にできるようになります。MONETプラットフォーム上では、サービサーも連携できますから、交通事業者とサービサー、サービサー同士でも新規需要に応じた新たなサービスを共創でき、さらに、駐車場の空き状況など、街のインフラ情報を組み合わせれば、街全体のモビリティの最適化を図ることもできます。

停車時間や走行スピードでAIが道路状況を把握する

ただ、こうしたMaaSを実現するためには、次の4つのキーファクター、「様々なデータとの融合」「デマンド(利用者の環境)の理解」「自治体連携・まちづくり」「サービスの共創」が必要不可欠とも言います。

「様々なデータの融合」としては、既存の人流データ、移動データ、人口分布データ、車両位置データ、交通渋滞データなどを統合し、「日本特有の交通環境をデータ化する」ことを目指しています。

「いつも停車時間の長い横断歩道があれば高齢者が多く通る道路であると予測する。車がゆっくりと走っていればそこが通学路だと認識する……。そうした移動速度やセンサーデータを統合したAI解析も『MONETプラットフォーム』で行っていきたい」(2019年5月21日掲載ソフトバンクのビジネスWEBマガジン FUTURE STRIDE「MONET発、日本経由で世界のMaaSへMONETサミット講演レポート前編」より)宮川社長は、2019年3月28日に開催された「MONETサミット」でこう述べました。