真価が発揮されるのは公共交通のない過疎地域

日本でのMaaSは、航空会社や鉄道会社からタクシー、IT企業まで、すでに異業種・多数乱戦の事業領域となっていますが、実証実験が行われている地域や事業者によって互換性がないUI(ユーザーインターフェース)が使用されていることも指摘されています。

筆者は、MaaSでは様々な交通手段がつながることが求められているので、グループを組成し、複数のチーム間で競争が起き、勝者に集約されるという流れになるのでないかと予想しています。

さらに、MaaSに本当に価値が生まれるのは自動運転が社会実装されてからであり、本当に解決されるべきなのは地方の過疎地域での公共交通の衰退問題ではないかと考えています。これに自動運転バスなどで対応し、そこにMaaSが交通や様々なサービスをつなげるという流れが最も求められるところであると思うのです。「ラストワンマイル」を解決してこそのMaaSなのです。

トレンドは「つながる、自動運転、サービス、電動化」

「CASE」の概念もMaaS同様に注目を集めています。CASEとは「Connected(コネクテッド化)」「Autonomous(自動運転)」「Shared&Service(シェア化とサービス化)」「Electric(電動化)」の頭文字をとったダイムラーの造語で、2016年9月のパリモーターショーで発表されました。自動車産業での4つのトレンドを見事に整理したものになっています。

ダイムラーは自動車メーカーのこれからの中長期戦略としてCASEを発表しましたが、今では自動車に限らず、あらゆる産業で、コネクテッド化、自動化、シェア化、サービス化、電動化が進んでいます。その意味では、CASEは、全産業に大きな影響を与えるまでのコンセプトになったと言えるでしょう。

コネクテッド化で言えば、クルマがインターネットでつながるだけでなく、IoTや5Gによって、クルマの部品同士、クルマの部品と道路、道路と信号機など、ありとあらゆるものがつながる時代が到来しようとしています。

中国杭州にはアリババパークと銘打たれたスマートシティがあり、筆者は2019年3月と7月にそこを訪れました。なかには、アリババ本社、アリババ社員の住居、近未来ホテル、最先端商業施設などがあるのですが、ここでは、本当にありとあらゆるものがつながっており、電動化、自動化による無人化、キャッシュレス化が徹底的に行われていました。