モテる人のワザ

「へこんで帰ってもらうのも悪いので(笑)、最後に簡単に笑いを取れるテクニックを紹介します」

渡辺先生は図を見せ、まず30秒で話せそうなエピソードを紙に書かせ、各自に読ませた。

「エピソードを話すと、時系列に話してしまいがちです。これだと聞いているほうも内容はつかめるのですが、笑いを起こすのは難しい。そこで今書いたことに自分の感情を加えて、再び読み直してみてください。千原ジュニアさんはトーク番組で『昨日、ムカつく後輩がいてね』と入ったりしますが、感情を表す言葉を使うことで、観客や視聴者を一気に注目させ、笑いをもたらすのです」

図に僕が書いた例を挙げたが、確かに感情をはさむことで、笑わせられるかはともかく、注目されそうな言い回しになった。特に千原ジュニアさんのように感情を表す言葉をトップに持ってくる倒置法的な使い方は効果がありそうで、これなら生真面目な僕にも使えそうだ。

今回参加してみて、インプロの訓練は、自分に足りない「即興力」が見えてきて、目から鱗だった。いきなり人を笑わせるのは無理だとしても、相手の問いかけを受け入れたうえでこちらの話を投げかけることは、異性にモテる人や場を盛り上げる人が無意識に使っているテクニックでもあるのだろう。

僕のようにネクラな部下を抱えて困っている上司がいたら、これをやらせてみるのもいいかもしれない……帰り道でそんなことを考えながら、ふと、上司が僕にこの取材をさせたのは、そんな動機なのではないかとも思った。

そういえば、上司に取材を頼まれたとき、僕は「でも、これって僕が」と返したが、これこそまさに「But」で始まる受け答えだ。これを「Yes,and」にして、「いいですね。僕にピッタリの企画ですね!」と切り返したら、佐藤さんのように編集部を沸かせることができたかもしれないな、と思った。

渡辺龍太
即興力(インプロ)養成コーチ
放送作家。著書に『1秒で気のきいた一言が出るハリウッド流すごい会話術』など
(取材・構成協力=麻生晴一郎、中野一気(中野エディット)撮影=宇佐美雅浩)
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