小泉・安倍内閣に引き継がれた「民間活力重視」の流れ

一方、朝日新聞は社説には取り上げなかった。

朝日社説と同じく、政府を批判することの多い毎日新聞は、11月30日付の社説で取り上げている。書き出しは褒めるわけでもなく、貶すわけもなく、割と客観的である。

「中曽根康弘元首相が101歳で死去した。敗戦を機に官僚から政治の世界に身を投じた。戦後保守政治の最後の生き証人だった」

「生き証人」という毎日社説の指摘は分かる。

「不動産バブルへの道を開いたとの指摘もあるが、民間活力重視の流れは、小泉純一郎、安倍晋三両内閣の経済政策に引き継がれている」

これもうなずける指摘である。

安倍首相は11月29日、中曽根氏の死去を受け、「東西の軍事対立や日米貿易摩擦の高まりなど、我が国が厳しい内外情勢におかれた時期に重責を担われ、戦後史の大きな転換点に当たってかじ取り役を果たされた」との追悼談話を発表している。毎日社説もそれを意識したのだろう。

中曽根氏と同じように憲法改正を目指す安倍首相

最後に毎日社説は書く。

「政治の生の変化に対応する姿勢は時に『風見鶏』と皮肉られたが、戦後政治に対し、新たな針路をもたらしたのは確かだ」

この「新たな針路」との指摘も理解できる。

だが、国会で「桜を見る会」の問題を追及されても逃げの答弁に終始する安倍首相は、中曽根氏が築き上げ、小泉純一郎元首相も踏襲したこの新たな針路をどう考えているのだろうか。中曽根氏と同じように憲法改正を目指す安倍首相の姿勢に嘘や偽りはないのだろうか。

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