また、格差が広がる中で生活苦などからストレスをためる顧客も増え、“従業員”という立場の弱い相手に怒りをぶつけることで、鬱憤を晴らすケースも多いようです。特に目立つようになったのが、見かけは品行方正、善良そうな「シルバーモンスター」。たとえば、定年退職した企業の元管理職やOBは、モンスター化しやすいので要注意。在職中と違って周囲が敬意を払ってくれないので、不満を募らせています。

では、どんなカスハラ対策をすればいいのでしょうか。ポイントは消火活動と同じく「初動対応」です。クレームが悪質かどうかを早めに見極め、適切な手を打てば、被害を最小限に食い止められます。ここでは、クレーム処理の手順に応じて、3段階に分けて説明しましょう。

第1段階ではまず、性善説に立ち、クレームをつけている相手を“お客さま”として扱い、誠心誠意、話を聞きましょう。最低でも5分は相槌を打ちながら苦情に付き合ってください。相手をクールダウンさせるのが先決。反論したりするのはもってのほか。そして、とりあえず頭を下げましょう。そうすれば、相手も拳を振り上げる理由がなくなります。ただし、言質を取られないように、「不快なご気分にさせて申し訳ありません」といった具合に、その場の接客態度について謝るのです。そうすれば、「あのときに非を認めて謝ったではないか」と後で詰め寄られても、「それはクレーム内容を認めたわけではありません」と切り返せます。

上司を呼べ!は、むしろ渡りに船

顧客の8割方は、第1段階のクレーム対応で納得します。しかし、それでも引き下がらなければ「グレーゾーン」。クレーマーの疑いがあります。第2段階の対応では、「ギブアップトーク」を心がけましょう。その場で結論を出そうとせず、「大切な内容ですし、私の一存ではすぐに判断しかねますので、持ち帰って検討したうえでお答えいたします」といった具合に回答を保留するのです。