中国にとっては一党独裁政権の維持が最重要

香港基本法は、行政長官選出について「選挙または協議」と定めている。危機感を持った中国政府は2022年に行政長官の選挙を行わずに、形だけの「協議」、つまり中国の国家権力で行政長官を任命してしまう可能性が出ている。

このため香港のメディアによると、林鄭氏の退任論が再浮上しているという。

中国には民主主義など存在しない。高度な自治を香港に認めた一国二制度の継続も怪しい。中国には、香港から民主派勢力を一掃して一党独裁政権を維持することが何よりも重要なのである。習近平(シー・チンピン)政権にとって林鄭氏など、どうにでもなる。

朝日社説は「自由と自治を尊び、力の介入は慎め」と中国に要求

新聞各紙の社説は、11月26日付で一斉に香港区議会選挙での民主派の圧勝を取り上げた。革新の朝日や毎日はもちろん、保守の読売と産経も民主派の勢いを歓迎し、中国政府を批判している。

朝日社説からのぞいてみよう。

「逃亡犯条例改正案に端を発したデモが本格化してから5カ月あまり。市民生活や経済への影響は長引いている。しかし、それでも有権者の多くは民主派の要求を支持したのである」

「生活ができない」と香港を去る市民も出ているというが、香港の未来のために中国の弾圧と戦おうと残った市民たちが民主派の立候補者を支持したのである。

朝日社説は書く。

「香港では5年前にも、『雨傘運動』と呼ばれる若者らの街頭行動がおきた。当時も市民の支持がわき上がったが、これほどの広がりはなかった」
「あのときよりもいっそう深刻な対中警戒感を市民に植え付けたのは、香港政府の背後にいる中国政府自身である。北京からの露骨な威圧こそが香港人の不安をかき立てている」

「北京からの露骨な威圧」が「香港人の不安」を膨張させているのだと、沙鴎一歩も思う。さらに朝日社説は訴える。

「民心を圧力で従わせることはできない。香港に対し中国政府がやるべきことは、民意を謙虚に読み、『一国二制度』の原則に立ち戻ることだ。香港の自由と自治を尊び、力の介入は厳として慎むべきである」

かつて中国寄りだった朝日社説が「自由と自治を尊び、力の介入は慎め」と中国に要求している。それほど香港市民に対する中国の振る舞いは「異常」で「恐怖」なのである。