東京・築地のマグロ競り市場には、早朝にもかかわらず欧米人が見物に。YOMIURI/AFLO=写真

東京・築地のマグロ競り市場には、早朝にもかかわらず欧米人が見物に。YOMIURI/AFLO=写真

ウェルカム・ジャパン(ようこそ日本)はいいが、日本の何を見せたいのか。日本にやってくる外国人が日本に求めているものは何なのかという基本的なマーケティングさえ現状ではできていない。たとえばアジアの若い女性なら観光地なんて全然興味はない。彼女たちが見たい日本は、圧倒的に渋谷109だ。上海やバンコクでは「109」の雑誌まで出ている。

要するに日本に何を求めているかという視点で顧客をセグメンテーションし、それにマッチした旅行のパッケージを提案することだ。中国人を呼び込むにはこれ、ヨーロッパ人を呼び込むにはこれ、というアプローチである。しかもそのパッケージにはテーラーメードの部分をたくさん残して、外国人観光客がそれぞれに「自分だけの日本」を発見できるような仕掛けをつくることがとても大切だ。

オーストラリア旅行に行くとオペラハウスの前で写真を撮ったり、エアーズロックで写真を撮ったりと、日本人は絵葉書で見た風景を確認するためだけのような旅行をする人が多い。対して北欧やドイツなどでは、自分で旅の行程を決めて、自由に山に登ったり街を歩いたりして、自分なりの旅の思い出を見つけるディスカバリー型の旅行をする人が少なくない。たとえば、外国人にはあまり知られていない飛騨・高山が、ドイツ人旅行者に人気のスポットだったりするのだ。

もう1つの戦略として、富裕層をターゲットにしたハイエンドの高級リゾートというパッケージもある。

世界の高級リゾートは1泊10万円以上が相場。今や、タイのサムイ島にある「シックスセンス」やインドネシアやタイの「アマン」といったアジア発の高級リゾートが好調で、世界中のセレブたちから支持を集めている。しかし、このセグメントでも日本は完全に遅れて超後進国になってしまった。

美しい自然からファッションやサブカルチャーのメッカまで、日本は観光資源を持っていながら、海外からの観光客を呼び寄せるセンスや発想、さらに大規模リゾート開発が可能になるような規制緩和が決定的に足りない。1泊2食付き1万9800円のパッケージ、などという世界で競っていては、3000万人達成などという目標は夢のまた夢となるし、仮に達成しても経済の波及効果は知れたものとなる。

(小川 剛=構成 YOMIURI/AFLO、AP/AFLO=写真)