体調不良のため洗濯ができず、服はネット通販で買う

母親によれば、長女は食事を作れないという。そのため、夕食はパート勤務から戻ってきた母親が作りに行く。朝食と昼食は、夕食の残り物を食べたり、お菓子やパンなどを食べたり。映画を見るのが趣味だそうで、母親がときどきDVDを買って、長女に渡している。

食費のほかに使っているのは、洋服代。お風呂に入れないので、夏などはかなり臭いがきつくなってしまうそうだが、体調が悪いとしばらく洗濯もできなくなるので、ネット通販で洋服を買っているそう。それらの支出が家計簿に記載されていないのは、本人も母親も支出内容やその額が全く把握できていないからである。

写真=iStock.com/SEE D JAN
※写真はイメージです

「マンションを買って」娘の希望は叶えられるのか

さて、長女が親に購入してほしいと希望しているひとり暮らし用のマンションだが、実現可能なのだろうか。結論を言えば、「今すぐ購入するのは避けるべき」である。

仮に現在、母親が住んでいる土地を売却するといくらになるか。私鉄の駅から徒歩5分程度で70坪の敷地面積という条件で路線価を調べてみると、4000万円以上で売却できそうだ。だが、だからといって、即購入できるわけではない。

「今すぐ、娘さんの希望をかなえるのは難しいと思います。(土地を売却すると)お母様が住む場所がなくなってしまい、今よりも生活コストが高くなって、生活自体が行き詰まってしまうからです」

と告げると、

「やっぱり無理でしたか」と母親は落胆の表情を浮かべた。

「娘さんはお父様と暮らせないのは理解できるとして、お母様とも暮らすのは難しいですか?」と尋ねると、

「私となら、何とか住めるかもしれません。生活のほとんどを私に依存していますし、同居が前提の住み替えでも、なんとか承諾してくれるかもしれません」
「娘さんは若く、平均余命まで50年以上ありますから、今すぐ家を購入するのはおすすめできません。そこで、お母様が仕事を辞める予定の8年後くらいに、購入計画を実施されてはいかがでしょうか。今の家・土地を売却して、マンションを購入する計画です。土地や家屋の名義はご主人様ですから、ご主人様の同意が前提になりますが……自宅を売って、マンション購入の資金にするのが唯一、娘さんの希望をかなえられる道だと思います」