「罰」を与えると成果は出るが、やる気が消える
デシはさらに「パズルを解けないと罰する」「相手と競争させる」という二つの実験もした。ともにパズル解きは順調に進んだが、パズル解きの楽しみは失われてしまった。高いノルマを課してセールス同士を競わせるのは、この「罰」「競争」と同じだ。罰で脅したり競争させたりしてパズルが解けたように、短期的には成果が出る。しかし、やる気は消え失せてしまうことも多い。
ノルマなどの目標を設定し、互いに競争させて売り込む方法はもはや限界なのである。では、どうすればいいのか? 参考になるのは、サービス業界の取り組みだ。サービス業界の成功企業は、ノルマ設定や従業員同士の競争に頼っていない。従業員の内発的動機付けを引き出して、顧客満足を生み出し、好業績を実現している。
「従業員第一主義」でサービスの質が上がる
サウスウエスト航空は米国航空会社で顧客満足度トップの常連であり高収益企業だが、実は「顧客第二主義」である。では何が「第一」なのかというと、「従業員第一主義」なのだ。創業者のハーバート・ケレハーはこう言っている。
「社員が職場で楽しく働けて、会社を愛しているという文化さえあれば、最高の顧客サービスを自然に提供できるようになる」
またスターバックスコーヒーで笑顔満点のスタッフからサービスを受けて気分がいい、という経験はないだろうか? スターバックスコーヒーはスタッフが自分の仕事を愛せるように努力をしている。顧客と接する従業員がどれだけ仕事を楽しんでいるかが重要だからだ。
サウスウエスト航空やスターバックスコーヒーのように、顧客と現場で直に接するサービス業界では「顧客満足の前に、従業員満足」と考え、高い業績を生み出す企業が増えている。
サービス業で従業員満足が顧客満足を生み出す仕組みは、「サービス・プロフィット・チェーン」という考え方を理解すればわかる。