企業としていかに苦境にあっても、高給と高待遇を勝ち取るための「バリア」としていたのが「キャビンクルーユニオン(CCU)」だった。組合員がストライキを打ったのを契機に分裂し、CCUと旧民社党系組合で最大勢力の「JAL労働組合(JALFIO)」に分かれた。JALは、会社の「御用組合」と揶揄されるJALFIOへ、乗務員たちを徹底的に誘導する方式を取った。
「契約社員として採用される新人は、JALFIOに加入しなければまず正社員にはなれません。CCUの組合員は、大阪や福岡の基地勤務が多いのですが、6月末には羽田に集約されるため、JALFIOに入らざるをえなかった」と、若手乗務員Dさんは語る。
大阪と福岡の基地閉鎖に対し、CCUは記者会見を開き、「(CCUの組合員を狙いうちした)整理解雇だ」と主張。が、今や新人CAがCCUに入ることは、会社人生の終わりととらえられるほどだ。「CCUに入ろうとすると『あなた、死ぬ気?』と言われるくらい」(Dさん)。
一方、組合の活動に悩まされた会社側も、時に不公平な人事を行った。昇進の際もJALFIOで活躍する組合員が有利となった。そして、「御用組合」を肥大化させた結果、人当たりがよいだけの「イエスマン」たちが次々と管理職に昇進し、組織弱体化にも繋がっていった。
また、2004年頃、人件費カットの名目でリストラが行われた際には、「有力幹部の派閥に入っていたベテラン社員たちは、明らかに退職の標的とされていながら、クビを免れた」とDさんは語る。
今回のリストラに関しては、さすがに社内政治がらみの露骨な情実人事は見られないようだが、とめどない社内のいざこざに巻き込まれた社員たちは内向きになり、時代から取り残されていったのではないか。
気がつくと年だけ取っていて、一般社会で通用する技術やノウハウを何も持っていないCAも多い。今回のリストラ対象外の若手にも不安が残るだけだ。
「育休で休んじゃえと『妊娠活動』する同僚も増えていますよ。今の苦境をとりあえず蚊帳の外で眺めたいと」(Dさん)
かつては、女性憧れの職業として好待遇で働き、独身生活を謳歌することもできた。が、その夢が打ち砕かれる現実をDさんをはじめとした若手は見ている。
「仕事が不規則すぎて、生理とかも超不順な状態。既婚の人は仕事より家庭に目を向け始めて退職を決めた人も多い。JALにしがみついていた女の人生、本当にこれでよかったのかなって」
すでにCAが花形職業である時代は去った。かといって、このご時世に、容易に他の職業につけるわけでもない。
「副業でも持ってるか、実家がお金持ちの人は気楽ですが、そうでない人は大変。マナー教室の講師とか、何とかしてきれいな仕事につこうとしている」とDさんは先輩の様子を語る。
夜間勤務を免除されているシングルマザーCAの中には、路線縮小や変更でフライトが激減し、レジ打ちなどのアルバイトを始める人も出てきたという。