「見えない戦争」はもう発生している

答えはノーだ。トランプは「原因」ではなく、アメリカの分断の「結果」に過ぎない。多少の揺り戻しはあるかもしれないが、おそらく次の大統領もトランプほど極端ではないにせよ、アメリカ・ファースト的な政策をおこなうことになるだろう。

田中均『見えない戦争 インビジブルウォー』(中公新書ラクレ)

このままアメリカがリーダーシップを失う状況が続けば、それぞれの国が自国の事情で動く、そんな世界がやってくるだろう。国際社会において協調して、人の移動を受け入れ、より平和な世界をつくっていこうというリベラルの理念は、崩壊していくことになるだろう。

歴史を見れば、国家間の根強い対立や社会・政情不安を背景に、各国が交渉や話し合いではなく、武力で主張を通してきたのがかつての大戦だった。今現在そういった危険性がすぐそこにあるとは言えないが、すでに“見えない戦争(インビジブルウォー)”はさまざまな場所で発生している。これがいつか目に見える戦争にならないことを願うばかりだ。

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