「自治を崩壊させかねない危うい措置は撤回すべきだ」
10月5日付の朝日新聞の社説は「混乱を収拾するよりも、逆にこじらせる恐れが強い。香港の自治を自ら崩壊させかねない危うい措置を撤回すべきだ」とストレートに書き出してこう指摘する。
「これをもとに、マスクなどで顔を覆うことを禁じる『覆面禁止法』が制定された。『暴力行為の抑制』を目的とし、きょうから施行されるという」
「4カ月以上に及ぶ市民デモの本質を、長官はいまだに理解していないのではないか。市民の怒りは、こうした強権による自由の制限に向けられており、反発を増幅する可能性が強い」
朝日社説の指摘するように、香港市民の怒りが「強権による自由の制限」に向けられているのは間違いない。朝日社説は続ける。
暴力や破壊行為は香港政府や中国の思うつぼ
「香港で法律をつくるのは立法会の役割だ。その手続きを省略する緊急法の発動は、『公共の安全に危害が及ぶ状態』などに限定されている」
「前回の発動は、英国の統治に市民が反対した1967年の暴動の際だった。当時は爆弾の使用などで51人の死者が出た。今の香港がそこまでの状況であるとは言いがたい」
「緊張を高めているのはむしろ香港政府側の強硬姿勢である」
朝日社説が書くように、いまの香港の事態が「公共の安全に危害が及ぶ状態」とは言えない。ただここで気を付けなければならないのは、デモが一部で暴徒化し、警察官に暴行したり、空港などを占拠して建造物を破壊したりしている点である。暴力や破壊行為は香港政府や中国の思うつぼだ。香港の民主派が国際社会から批判されることになりかねない。