たしかに欧米にも「覆面禁止法」は存在するが…

毎日新聞(10月6日付)の社説も「香港の緊急法発動 反発高める強引な手法だ」との見出しを掲げて香港政府を批判する。

「香港政府はデモ参加者がゴーグルやマスクで顔を隠していることで違法行為の追及が困難になり、暴力がエスカレートしていると主張する」
「欧米にも覆面を禁止する法律があることは確かだが、議会を通じた立法措置に基づくものだ。『緊急法に基づく措置と比較すべきではない』という民主派の主張には理がある」

欧米に覆面禁止の法律が存在することは重要な指摘だろう。だが、毎日社説がいうように緊急法で定めるべき法律でない。

撮影=的野弘路
9月21日16:49 香港 屯門(テュンムン)。警官隊との衝突に備え、デモ隊が投石用の石を集めていた。

毎日社説は最後にこう主張する。

「長引く抗議活動は国際金融都市、香港の経済にも深刻な打撃を与えている。民主派も暴力のエスカレートを望んではいまい。ここは林鄭氏が一歩後ろに引くべきだ」

中国の習政権は「一国二制度」を尊重しているというが、それなら言うまでもないことだろう。香港政府や中国は、政治は国民や市民のためにあるという統治の基本に立ち返るべきだ。強権的な統治を続けても出口はみえない。

「強権に屈しない強い意思の表明であり、支持したい」

「香港の緊急法 実質的な『戒厳令』布告だ」との見出しを付けた10月7日付の産経新聞の社説(主張)はまずこう訴える。

「林鄭月娥長官は『一国二制度』の原則を自ら壊しかねない一線を越えてしまった。事態は極めて重大である」

一国二制度とは、簡単に言えば共産・社会主義を維持しながら資本主義を導入する中国政府が編み出した独自の統治方法で、香港政府に高度な自治も与えている。産経社説は行政長官に大きな権限を集中させる緊急法が、この制度を崩壊させる要因になると指摘しているのだ。さらに産経社説は主張する。

「最初の緊急立法として、デモ参加者のマスク着用を禁じる『覆面禁止法』が制定された。この法律が施行された5日、数千人もの香港市民がマスク姿で白昼堂々とデモを展開した。マスクをとれば身元が簡単に特定されてしまう。強権に屈しない強い意思の表明であり、支持したい」

保守色の濃厚な産経社説としては、「強権に屈しない強い意思」を「支持したい」とするのは、興味深い書きぶりである。その姿勢が香港デモ以外の話題でも共通しているかは、しっかり読み比べていく必要がある。