「労働基準法に年休権の消滅時効に関する規定はありませんが、賃金の消滅時効2年と同じだと考えられています。この点、債権法改正により債権の消滅時効が5年に統一されることを踏まえ、賃金債権についても現行の2年から5年に変更されるのではという議論があります。まだ決まった話ではありませんが、将来、賃金や年休も消滅時効が5年に伸長される可能性は相当程度あるかと思われます」
もしそうなれば、2年でやりくりしていた有休が5年という長期的スパンで設計できるようになるかもしれない。
会社が未消化分を買い取る場合
年休の未消化分を会社側が買い取ることは法律上、原則として認められていない。有給休暇の制度は、身体を回復させることが目的。金銭的な補填で有給休暇を消滅させることは法律が予定していない。
「ただ、退職時に有給が未消化の場合は少し違う。会社と労働者の合意による未消化分の買い取りは、法律に違反しないと考えられています」
ただ、これはあくまで労働者と会社の合意が成立する場合のみ。労働者が買い取りを要求する権利も、会社が買い取る義務があるわけでもない。買い取りの見込みがないのであれば、未消化分はきっちり消化してから辞めたほうが賢明といえそうだ。
ウチはブラック企業で、有休は取れない、という人は?
「有給取得の意思は、口頭で表明しても『聞いてない』などと言われるかも。メールなど形の残る手段で連絡するのが適切でしょう。通常は、会社の就業規則などで有給休暇のルールが定められていると思われるので、それが合理的な内容であればルールに従って申請するのが適切です。それでも有給扱いとされず給与が支払われない場合は、証拠のメールや給与明細等を持参して所轄労基署に相談することも、検討に値します」
(コメンテーター=プラム綜合法律事務所 梅澤康二 図版作成=大橋昭一 写真=iStock.com)