香港は大陸が最先端の技術・知識を吸収する窓口

米国は貿易戦争の対象を次第に他の分野にも広げている。最もひどい手は科技、教育等の分野での中国を封じ込めることである。最近、米国は中国からの留学生と訪問学者に対する制限政策を取り、さらにハイテク企業に対する規制を強化している。こうした場合にこそ、香港の国際自由港の地位はより重要になる。もし米国側が全面制裁に踏み切った場合に、香港は大陸側と密接な関係のある唯一の国際都市となる。

香港の大学は世界的に名が知られ、香港大学、香港中文大学、香港科技大学、香港城市大学、香港理工大学等は文学、歴史学、哲学、数学、物理学、化学はもちろん、コンピューターや人工知能の研究水準は世界最高レベルである。

香港はだれにも邪魔されずに国際学術交流に参加し、全世界の最新科技を吸収できる。いかなる状況下でも、封鎖されても、大陸は絶えず学生を香港に派遣して学習させ、また香港から各種の人材を吸収することができる。

同時に、先端科技の導入について、大陸は香港で登記されている第三国企業から目的を達成することができる。

中米貿易戦争の影響で、先進国からの有形、無形を問わず、希少な経営資源を直接手に入れるルートは縮小しているが、香港という「飛び地」は大陸の足らざる部分を補ってくれる。

香港は人民元国際化の先兵役

世界の経済大国の通貨は当然、全世界で通用する世界通貨である。自国の通貨が世界通貨になるということは、印刷された自国貨幣で、外国製品やサービスを直接購入でき、米ドルを使わずに、直接、外国の国際企業と取引でき、米国の監督・管理システムを回避できることを意味している。

中国が世界の大国になるためには、人民元の国際化の助けが欠かせないのである。もともと自国通貨を国際化することは非常に難しく、決して国外に銀行を開設して元を売買しやすくするぐらいでは実現しない。元が国際化するには、誰かがあえて元を支払いに使い、誰かがそれを受け取る、つまり決済通貨として使われるようになって初めて成り立つのである。それではどのようにして、企業や投資家に元を使ってもらうようにするのか。

2004年、中国大陸は香港を人民元国際化の「橋頭堡」にすべく、香港で人民元オフショアセンターの建設を試みた。2007年、初の人民元債券が香港で発行された。また2009年、クロスボーダー元決済が香港で試験的に行われた。中国財政部(財政省)が香港で元国債を発行。2010年、クロスボーダー元決済を簡素化。2014年、「滬港通(上海・香港ストック・コネクト)」が始まり、実際に上海(中国大陸)と香港の株式を自由に買うことができるようになった。

香港の金融機関が次々に人民元業務に着手し、ここ数年はますます多くの銀行窓口、現金自動預け払い機(ATM)が元サービスを提供するようになり、元は香港を通じて大量に海外に流れている。今日の香港は元を完全に兌換できる国際通貨に換える集散センターの役割を担っている。トランプ政権が中国の銀行に対して、直接、名指しでコントロールを強化し始めた状況下で、香港は元の国際決済センターとして大きな存在意義を持っている。