そこで、中国大陸の製品はまず香港に持ち込まれ、ラベルを張り変え、「香港」の衣に着替えて、世界各地に輸出されると、一部、先進国の中国大陸に対する制限を回避できる。このため中国大陸から直接輸出した場合とくらべ、関税を軽減できた。

その一部は米国にまで輸出され、巧妙に貿易摩擦を回避してきた。世界第2の経済大国である中国の7分の1の産品が、香港を通じて全世界に販売されてきた。香港は中国大陸の合法的、合理的な各種貿易障壁の抜け道だとも言える。

中米貿易戦争によって、もし中国の多くの対外貿易が中止に追い込まれたとしても、中国は香港というパイプを通して多くのことができるのだ。

香港は大陸企業に国際資本を供給する資金のプール

昨年には次のようなうわさが流された。米国政府は中国企業のニューヨーク証券取引所での新規公開株(IPO)を禁止する構えであり、中国企業が全世界から資本を獲得するパイプを遮断しようとしている。

世界に目を向けると、欧米の証券取引センターであるニューヨーク、シカゴ、ロンドンの3巨頭と競うことができるのは、東アジアの香港、東京、シンガポールだけである。しかも香港金融システムの中核をなすのは香港交易および決算所有限公司(香港証券取引所、Hong Kong Exchanges and Clearing Limited)であり、後者の略称は港交所(HKEx)である。

企業がどの取引所で上場し、資金をいくら調達するか、これはその取引所の市場間の競争力を反映する。IPOで調達した資金総額では、港交所は過去10年の間に6年も世界一となった。2018年、港交所での新規公開企業は218社、調達総額は2880億香港ドル(約3兆9567億円)で、世界IPO市場では、並ぶもののないトップであった。

中国最大のインターネット企業である騰訊(テンセント)は、株式を香港市場に上場した。2018年には、小米、美団、映客、海底撈、中国鉄塔等の中国内地企業がこぞって香港で上場し、港交所で8社が同時にドラを打ち鳴らす盛況ぶりだった。おかげで、現場でドラが足りず、カメラマンが足りず、記者が足りないほどだった。

なぜ港交所はこれほど大きなパワーを発揮しているのか?

香港は国際的なビジネスセンターであり、国際的なプロジェクトが組成される中枢都市であるからだ。外資から見て、香港の金融システムは中国大陸市場に参入する際に最も重要で、最も信頼できるプラットフォームである。これは中国大陸の目と鼻の先に資金プール(=香港)があり、大陸企業に汲めども尽きずに提供される良質な国際資本があることを意味している。

中米貿易戦争はきっと多くの優秀な企業にダメージを与えるだろうが、これらの優秀な企業は香港というパイプを通して国際資本を獲得することができる。