「解いて、丸つけして、正答率出して、終わり」では落ちる

③の「各科目の特性を考えないで過去問に取り組む」は見逃されがちな点です。過去問の取り組み方は教科によって異なります。例えば、僕の知人の英語講師はこう言います。

「英語は時間との勝負という側面が強い。したがって“初見の問題を時間内で解き終える訓練”は、最後の最後までやり続ける必要がある。だから、最低1年分は、直前期の練習のために残しておいたほうがよい」

では、日本史はどうか。先輩の日本史講師はこうアドバイスします。

「日本史や世界史の問題は、しっかりと基礎の勉強をしていれば本番のときに時間が足りなくて苦労することはない。むしろ時間が余るのが普通です。だからスピードトレーニングは必要ないし、同じ問題を何度もこなすことで知識の補充や定着にもつながる。したがって、直前期対策に過去問を残しておく必要などない。ガンガン進めていってよい」

全科目一律に進めるのではなく、各科目の先生に相談し、どのように演習を進めていくべきか、アドバイスをもらうとよいでしょう。

④の「やりっぱなしでアフターケアをしない」も厄介な問題です。

写真=iStock.com/PeopleImages
※写真はイメージです

どんな勉強でも、しっかりと復習しなければ、時間の無駄。みな知っている基本中の基本ですが、こと過去問演習については、〈解いて、まるつけして、正答率出して、終わり〉というパターンとなるケースが多い。これこそ、先ほど言った「過去問に逃げる」行為と言っていいでしょう。

例えば、英語や数学、理科社会、古文・漢文などの科目なら、数年分やれば、自分がどんな問題、どんな箇所で間違うことが多いのかがわかるでしょう。そうしたら、その単元や知識を、問題集や用語集などで重点的に学習し、弱点を補うことができます。

現代文や小論文に関して言えば、出題される文章はその大学・学部ごとに好みや傾向があります。例えば、早稲田大学の法学部や商学部あたりは、「国民国家」論を出題する傾向が強い。であるなら、過去問を演習し、採点した後、その文章を徹底的に読みこんで、そこに書かれてある内容を理解しなおし、頭に焼き付けておくことは、かなり有効な学習法になるはずです。

さらに、本文に登場しながら注の付いていない語句は、その大学においては“受験生の知っておくべき常識”と判断されているので、それらの語句の中で知らないものがあったら意味調べをし、ノートにまとめるなどという作業もよい勉強になります。

つまり、過去問は「採点結果よりも、採点した後のケアが大切〉ということを強調しておきたい。