学費のために週6~7日で夜勤を続けた末
ダワ君が入学した「情報ビジネス学科」は6クラスある。同じクラスの26人の学生はすべて留学生だった。半数以上がネパール出身で、他のクラスメイトの国籍もベトナムやウズベキスタンなど、“偽装留学生”の送り出しが疑われる国ばかりだ。他の5クラスにも、日本人の学生がいる気配はなかった。
しばらくすると、ネパール人留学生の1人が学校から姿を消した。「所在不明」となった可能性が高い。続いてベトナム人女子留学生がビザを更新できず、日本から離れていった。そしてダワ君自身も7月中旬、入管当局でビザ更新が拒まれ、ブータンへ帰国するよう告げられた。「週28時間以内」を大幅に超える違法就労が発覚してしまったのだ。
確かに彼は、日本語学校当時から週6~7日の夜勤を続けていた。弁当工場や宅配便の仕分け現場などをかけ持ちしてのことだ。しかし、違法就労していなければ、進学先の学校に支払う学費は工面できなかった。
約4カ月の在籍なのに、残りの学費は返還されず
上野法科ビジネス専門学校には、入学前に初年度の学費65万円を収めた。留学生に限って「奨学金制度」が設けられていて、日本人より30万円も安い。その学費の支払いについてダワ君は面接で尋ねられた際、「私とお父さんが半分ずつ払います」とうそをついた。それで入学は許可されたが、父親に学費を支払う経済力などないことを、学校側が気付かなかったとは思えない。
ダワ君の留学ビザ更新が不許可となると、上野法科ビジネス専門学校は早く帰国するよう促してきた。学校側は自らの留学生が「所在不明」となることを恐れる。入管当局や、所轄庁である県に睨まれ、今後の留学生受け入れに影響しかねないからだ。
ダワ君には、ブータンで背負った借金が60万円以上も残っていた。それでも学校から逃げ、不法残留して働くつもりもなかった。ただ、せめて入学前に支払った学費の一部を返してもらいたかった。学校には4カ月ほどしか在籍していない。しかし、学校は返還に応じようとはしなかった。(続く)