日本への留学生派遣が政界スキャンダルに

将来を悲観し、ある青年は自ら命を絶った。また、病に倒れ、1年にわたって昏睡状態の続く女子留学生もいる。借金を抱えたままブータンに帰国した留学生も多いが、現地に仕事はない。返済の目処も立たず、彼らの人生は台無しである。

ブータンは今夏、秋篠宮一家の訪問先として話題になった。一方で同じ頃、ブータンでは日本が別の意味で注目を集めていた。「学び・稼ぐプログラム」に絡むスキャンダルが、連日のように現地メディアで報じられていたのだ。

帰国した留学生や親たちがプログラムの責任追及に乗り出した結果、7月末にはBEOの経営者らが王立ブータン警察に逮捕された。逮捕容疑は書類偽造である。さらに8月下旬、同国検察当局が、BEOとともにプログラムを主導したブータン労働人材省の局長を起訴した。BEOに対し、海外への労働者派遣の免許を不正に与えたことに加え、インドへの労働者の送り出しに絡む汚職まで指摘されてのことだ。

同時に前労働人材大臣と家族も起訴されるなど、日本などへの労働者送り出しは、政官の大物を巻き込む一大スキャンダルとなっている。まさに国際問題に発展しているというのに、日本のメディアは全く報じていない。

30人のブータン人留学生、残ったのは……

ダワ君の留学先となった千葉県内の日本語学校には、彼と同じ2017年10月に約30人のブータン人留学生が入学した。皆、今年3月に卒業したが、日本に残ったのはたった6人にすぎない。

1人は就職し、5人が進学した。5人が特別に優秀だったわけではなく、進学先の専門学校などに払う学費を準備できただけのことだ。

専門学校や大学への進学には日本語能力試験「N2」合格が目安となる。しかしN2はおろか、その下の「N3」に合格した者すら、約30人いるブータン人のうち2人しかいなかった。夜勤のアルバイトに追われ、とても勉強できる環境ではなかったからだ。

日本語能力がなくても、学費さえ払えれば進学先は見つかる。進学した5人のうち、3人は東京福祉大学に入学した。同大は留学生向けに設置した「学部研究生」と呼ばれる非正規の1年コースで、過去1年間に約700人もの学生が「所在不明」となっていたことが今年3月に発覚し、テレビや新聞、また国会でも問題となった。3人のブータン人留学生が進学したのもこのコースである。

ダワ君ら残りの2人は、千葉市内にある上野法科ビジネス専門学校へ進学した。日本語の筆記試験は一応あった。ただし、形ばかりのものだった疑いが強い。