――大同生命の社長時代には、全国に100人あまりいた支社長クラスの半分近い44人を入れ替える大胆人事を断行されたことがあったそうですね。
5人、10人ぐらいを異動させても、組織全体としては何のインパクトも起きない。限られた人材の中で活性化を図る、そして人を育てるとなると本人も周囲もびっくりするぐらいのことを勇気を持ってやらなければならない。
年度初めに、その支社長全員と本社の幹部が集まった席は、非常に衝撃的でおもしろかったですよ。ベテランの連中にすると、「あいつ誰だ?」と顔を知らない新人支社長がいっぱいいるわけです。いままで長期間支社長をしていた連中も、これはヤバイ、社長は本気だと一種の危機感を持つようになる。新人同士も励みになり、リーダーが活気づくと支社の職員も元気になる。しかし、すべてがうまくいくわけではなく、1年以内に元の副支社長などに再度異動させた者が10人くらいいました。組織として人を育てるにはそれぐらいしなければダメです。
お客様との真剣な対話が新しいアイディアを生む
――持ち株会社発足から5年目。次のステップに向かって人材面から見て課題ははありますか。
この5年間はそれぞれの会社が束になって突貫工事のように一つの目的に向かって走ってきたので団結力があったと思います。グループ会社なのだから、職員一人ひとりは、グループ最適と個社最適の両方を考えなければいけないといえるでしょうし、それができる人間をグループとして必要としています。
よく「保険会社は人と紙でしかない」と言われます。出身大学や学部、キャリアなどに関係なくいろんな人がいることが組織として大切です。そして各人が(1)いま自分が働いている場所で何をしたいのか、(2)その先に何を目指しているのか、(3)部署や会社をどういうふうに動かしていきたいと思っているのか、という意識を持っていることが重要です。常に危機意識を持ち続けて、仕事に取り組む職員が少しずつ増えてくれば、企業はうまく転がっていくものなのです。