給湯室にマネキンを持ち込んで実験を繰り返した
リニューアル担当者、商品開発事業本部の相良裕子氏が発売50周年に向けたシャンプーハットの改良を任されたのは、2017年11月のことだった。50周年となる2019年まで、約1年。当初は子供が遊べるようシャンプーハットから音や光が出るなど、現行品に装飾を加える方向で進めていたが、値段が3〜4倍に上がってしまう。当時販売されていたシャンプーハットの定価は550円。3倍となれば1700円近くなる。そこで2017年12月に調査を行い、シャンプーハットを使用しない家庭に理由を聞いた。
すると浮かび上がったのは、「早く水に慣れさせたい」という親心。子育て関連のサイトには「泣いて嫌がったとしても、水嫌いにならないように頭からお湯をかけるべき」という意見も出ていた。
そこで相良氏が考案したのが、「水嫌いを卒業する」というコンセプトだ。ハット部分の幅を調整するなど、さまざまな形状を試し、最終的に「シャンプーハットに穴を開ける」という奇策にたどり着いた。穴の位置やサイズを調整して作った試作品は、約200枚。自宅に持ち帰ってわが子にかぶせ、社内ではマネキンの目元にカメラを設置して、最適な形状を研究した。時には会社の給湯室を占領し、水浸しにしたこともあるという。
1年の開発期間を経て、2019年春には保育園でモニター調査を行った。約8割が「気に入った」と回答。「穴から水が落ちているのを子供が楽しそうに見ていた」「子供が気に入っているので返したくない」など、商品を高く評価するコメントが多数寄せられた。
エレキバンに続くオリジナル商品を作りたい
人口減少が続く現在の日本において、卸売業界を取り巻く環境は今後厳しさを増す。現状維持はできても拡大は難しい。そんな状況に立ち向かうため、同社は今まで以上に開発に力を入れるという。一つは自社のオリジナル商品、もう一つはメーカーとのコラボレーション商品だ。松浦社長はこれからの展開についてこう語った。
「新商品を開発して販売する方向に少しずつ変えていかなければならないと思っている。シャンプーハットやエレキバンに続く、ピップのブランドを代表するようなオリジナル商品を開発し、さらに他社とのコラボレーションではスピーディーな商品開発を目指す。双方を強化するなかで重視していきたいのは、消費者起点のマーケティング。お客さまのニーズや困りごとを収集し、社員の想いとともに商品開発につなげていくことが大事。それが弊社の生きていく道だと思っている」(松浦社長)