子供が髪を洗う時に、目に水が入るのを防ぐ「シャンプーハット」。ピップは1969年の発売以来、一度も形状を変えてこなかったが、今年9月、初めて「穴を開ける」というリニューアルを断行した。水を防ぐための商品に、なぜ穴を開けてしまったのか。ピップの松浦由治社長に聞いた——。
撮影=小野 さやか
シャンプーハットをかぶって撮影に応じる松浦由治社長

変えてきたのは「キャラ」と「色」だけだった

9月24日、ピップが新しい「シャンプーハット」を発売した。シャンプーハットはピップが開発した商品だが、1969年の発売開始以来、形状に変更を加えるのは初めてだ。

画像提供=ピップ
リニューアルした「ピップ ステップ! シャンプーハット」。穴なし、小さい穴、大きい穴と、3つの段階がある。

この形状は「開発担当者が『トタン屋根を流れ落ちる雨』から思いついた」(ピップ広報部)という。発売から20年間は意匠で守られていたが、意匠が切れると各社が参入。「なぜか商標を取得していなかった」ということで、各社が同じ名称を使ったことから、結果的にシャンプーハットという商品名を誰もが知るようになった。

形状は発売当初から変わっていない。定期的にパッケージと本体にあしらうキャラクターと色を変えるだけで、50年の歴史を積み重ねてきた。「子供の顔に水がかからないようにする」というニーズには、それだけ根強いものがあるということだろう。

松浦由治社長は、「シャンプーハットはエレキバンよりも古く、ピップのブランドを代表する商品」と話す。

「シャンプーハットは現存する商品のなかでは最も歴史が古い。日本では今でも年間100万人弱の子供が生まれており、少子化といっても安定的な市場がある。リニューアルに取り組む価値があると思った」(松浦社長)

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リニューアル前のシャンプーハット
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過去に販売されていたシャンプーハット。左はNHK「おかあさんといっしょ」内で放送されていた「にこにこぷん」、右は「ドラえもん」のパッケージ。(ピップ『社史』より)