おまえがやりたかったのって、そんなことだっけ

【中山】予約購入に切り替えるまでは厳しかったです。計画ではすぐに黒字化するはずでしたが、最初の資本金8000万円は10カ月でなくなりましたから。当時は迷走していて、藤田さんに「芸能人が旗振りして募金活動するサイトに事業変更したい」と相談したほど。すると、「おまえがやりたかったのって、そんなことだっけ」と一蹴されました。「お金のことはCFOに相談すればいいから」と背中を押してもらえて、なんとか事業を存続できました。

【田原】経営が軌道に乗ったのは、予約購入にしてから?

【中山】お金が尽きかけて数カ月後、「ノット」という時計のベンチャー企業が、先行販売的にクラウンドファンディングを実施しました。このプロジェクトで500万円分の予約ができて、社長さんはその実績を持って小売店に営業したところ、扱ってもらえるようになりました。その社長から「マクアケはお金を集めるだけのサイトじゃない。メーカーにとっては、つくる前に、顧客がいることを証明できることが何より後押しになる」と指摘されて、はじめてこの事業の可能性に気がつきました。それから他のメーカーさんにも話を聞きに行って、事業を募金サイトから予約購入モデルに再定義した。そこから順調に伸びて、3年後に黒字化しました。

【田原】マクアケの競争相手はどんなところですか?

【中山】米国も含めて比べられるサービスはいくつかあるのですが、見ているマーケットは違います。水にも植物にあげる水から工業廃水になる水があるように、同じクラウドファンディングでも中身は別。僕らが大切にしているのは、生まれるべきものがどうやったら生まれるかということです。そこに軸足があればいいので、クラウドファンディングという言葉に踊らされることなくやっていきます。

【田原】中山さんが見ているマーケットは将来、伸びますか?

【中山】つくってから売る場所はゾゾやアマゾン、楽天などたくさんあって、僕の前の世代の起業家はそこで勝負をしてきました。しかし、つくる前に売る“0次流通”は手つかずのまま。マーケットのポテンシャルは非常に高いです。また、地方にも可能性を感じます。地方のメーカーはいま大手の下請け化が進んでいます。新商品を出して在庫を抱えるリスクを嫌うからですが、そうしたメーカーほどマクアケを活用したクラウドファンディングが役に立つ。地方の会社は、僕らにとって欠かせないパートナー。このサービスが、地方を活性化させるファーストトリガーになればいいと思って取り組んでいます。